夫Aさんと妻Bさんにそれぞれ残された資産と老後の暮らし
Aさんに残されたのは老齢年金の約203万円(月の手取りは約14万7,000円)と、預貯金2,250万円、ローンを完済した自宅です。一見、裕福な老後に思えますが問題がいくつかあります。
・大きな自宅建物の維持費が高額であること
・建物の維持費で預貯金が目減りしていくこと
・生活レベルを大きく下げないと年金では生活できないこと
・趣味や旅行にはあまり費やせないこと
これまで大手企業の部長として比較的裕福な生活をしてきたAさんですが、今後は趣味のゴルフや、引退後の楽しみにしていた旅行もあまりできなくなりそうです。現役時代に家事は妻にすべて依存していたため、料理はおろか掃除の仕方もわかりません。外食を活用した食生活となるため生活費は大きくなり、健康にも懸念があります。
1番の問題は自宅の維持費です。建物が古くなっているとはいえ、固定資産税は毎年35万円程度。建物の屋根外壁の塗り替えも必要です。最近は窯業系のサイディングが欠けはじめたため、いずれ張替が必要になりそうです。
年金と現在の預貯金ではとても捻出できません。立地のよさから医師である娘夫婦がクリニックを開業するときに、クリニック兼二世帯住宅に改築する予定にしていましたがそれもいつになるのかわかりません。建物の維持ができなければ予定を変えて売却するしかありません。
また、次女の子供に重い障害があるため、いくばくかの資産を残してあげようと計画していましたが、現状では不可能です。やはり自宅を売却するしかないのかもしれません。
Aさんはつい、妻に対して被害者意識を持ってしまいます。強欲に資産の半分を奪って離婚して逃げた……という思いに囚われてしまうのです。
しかし妻のBさんもまた、決して裕福な生活ができるわけではありません。月に約16万円の年金でアパートを借り、一人暮らしをしています。高齢者でも働けるアルバイトを探すのですが、職歴がないため採用には至っていません。妻は、財産分与された2,250万円のほとんどを障害のある孫に残したいと思って手を付けないつもりです。
離婚することで夫婦ともにライフプランが大きく変化してしまいました。離婚がなければ、年金は2人合わせて約400万円受け取ることができ、6,500万円の貯蓄を使って、裕福で安定したリタイアメントライフが待っていたかもしれません。年金分割と財産分与をしたからといって、ないよりはましというだけ。夫が思うように「妻がうまいことやった」というほどの状況ではないのです。
Aさんのような裕福な会社員でも老後の離婚はライフプランを大きく狂わせてしまいます。特に昭和までの価値観から抜け出せず、妻の人生を「抑圧」したタイプの夫は、妻から熟年離婚を告げられ狼狽することになるかもしれません。
長岡 理知
長岡FP事務所
代表
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