(※写真はイメージです/PIXTA)

後藤光氏が代表を務める株式会社サステナブルスタイルが運営する、相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』の記事から、一部編集してお届け。今回は、「認知症の人が残した遺言書は無効となったしまうのか、またどのように扱われるのか」について詳しく解説します。

「遺言」、有効か否かの判断基準は

作成した遺言書が有効か否かは、遺言を作成した人の遺言能力の有無で判断します。遺言能力の有無が問題となった場合、それを最終的に判断するのは裁判所です。

 

そのため、認知症を患っている遺言作成者本人に遺言能力があるのか、ないのかが問題となります。

 

認知症の人は通常の生活ができ、必要最低限の質問に答えられるケースも多いです。そのため、認知症だからといって作成した遺言書が直ちに無効と判断されるわけではありません。

 

次の基準を総合的に考慮して、遺言作成時に遺言能力があったかどうかを判断します。

 

・医学的見地:診断書・鑑定書医師の診断書・鑑定書等で判断

・遺言内容の複雑性:遺言内容・効果を遺言者が理解していたかどうかの判断

・遺言内容の合理性:遺言者の生前の意思に合致した内容かどうかの判断

 

この3つの基準から裁判所が法的判断を下します。

認知症の人が書いた公正証書遺言が無効になるのは稀?

公正証書遺言とは、公証人が遺言者のために作成してくれる遺言書です。公証人とは、契約等の適法性を公的に証明する公務員です。

 

公正証書遺言の作成の仕組み

公正証書遺言の手順は、まず遺言者本人が公証人・証人2人の前で遺言内容を口頭で告げ、公証人が文書でまとめ、遺言者本人・証人2人が内容を確認します。なお、証人に特別な資格は不要です。弁護士のような専門資格者の他、遺言者の友人・知人等を立てても構いません。

 

公正証書遺言の作成の際は第三者が関与するので、遺言者本人だけで作成する自筆証書遺言よりも、信頼性が高いといわれています。

 

公正証書遺言が無効となる場合

裁判所によって無効と判断されるケースは主に次の5つです。

 

・遺言者本人に遺言能力がなかったと判断された

・遺言者が口頭で遺言内容を公証人に伝えていない

・証人が不適格者:未成年者や相続人・その家族、公証役場の職員・公証人に雇われた人だった

・遺言者の勘違い:遺言者が意図していた内容と遺言内容に違いがある

・遺言内容が公序良俗違反:後継者がいるのに、経営者が顧問弁護士へ会社の全財産を譲る等

 

遺言者に遺言能力があったとしても、公正証書遺言の作成のプロセス(遺言者が口頭で内容を伝えていない、証人が的確ではない)で問題があったり、遺言者の勘違いや遺言内容が常識に外れていたりしていれば、無効になってしまいます。

 

なお、公正証書遺言を無効とするには原告(無効を主張する側)が裁判所へ申立て、無効の主張・立証を行う必要があります。

 

遺言能力とは何か? 誰がどのように評価するのか?

遺言能力とは、遺言がどんな意味を持ち、どんな効力があるかを理解できる能力です。

 

遺言能力の有無は医学的判断を尊重しつつ、最終的には裁判所が法的判断を行います。遺言能力の有無が争われた裁判では、次の3つの基準を考慮して判断されます。

 

遺言時の心身の状況はどうだったか

遺言を作成した時、遺言者はどのような心身状態だったかがチェックされます。以下の観点から判断します。

 

・精神的な疾患があるのか

・遺言者は常に精神的な疾患を患っているのか、それとも一時的か

・遺言者が患う精神的な疾患の症状・程度は重いか

・遺言時や遺言前後の言動や精神状態に異常がみられなかったか

 

精神科医の鑑定書や医師の診断書、看護師の看護記録等を参考に遺言作成時、遺言作成は困難だったかどうかを推察します。

次ページ遺言者が内容を理解し作成していたのかどうか

※本記事は、株式会社サステナブルスタイルが運営する相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』より転載したものです。

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