農地相続とは? かかる税金はいくら?
農業を営んでいた被相続人から相続人が農地を引き継ぐケースもあるでしょう。この場合には自分で農業を営んだり、農地を他人へ貸したりして、農地経営を継続できます。
農地を相続した場合にかかる税金
相続時に課される税金は、原則として固定資産税評価額を参考に算定します。農地の固定資産税は非常に安く、一般的な農地では1,000m2あたり1,000円程度しかかかりません。
一方、宅地では同じ面積でも数十万円に達するので、税額は概ね1/100以下となります。 ただし、農地がどこにあるかで相続税の算定方法は異なってきます。下表をご覧ください。
一般的に多くの方々がイメージする農地は、純農地・中間農地であると考えられます。
純農地・中間農地では固定資産税評価額に評価倍率をかけ、相続税を算定します。評価倍率は国税庁のホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認が可能です。
例えば10,000m2の純農地で固定資産税が10,000円、評価倍率が3.1の場合
固定資産税10,000円×評価倍率3.1=31,000円
相続税評価額は31,000円です。
農地の維持費
農地を含めた相続税も納め、所有している農地の固定資産税を払い続ければ農地が適切に維持管理できるわけではありません。
農地経営を行う場合、日常的な草刈や除草、農道・用水路の整備が必要となります。耕作機械・農機具は被相続人から引き継いだとしても、耕作機械の燃料代や農薬の費用等、いろいろと出費がかかってしまいます。下表をご覧ください。
農地相続をするデメリットとは? 農業をしない人の農地相続
農地の固定資産税は安くなる傾向があるものの、相続した際には次のようなデメリットが想定されます。
維持管理の労力・費用が重い負担となる
農地経営を行う場合には農業用機械の購入や修繕費、種子・苗・種いも・肥料等の購入費はもちろん、農作物に深刻な影響を与える害獣・害虫被害の防除費用が必要です。
また、実際に農作物を栽培しなくても、他の方々が所有している農地に配慮し、農地の草刈・除草等を行うなど適切な管理が求められます。
他人に農地の管理を任せても報酬が発生するので、農地相続を検討する際は農地に費やす労力・金銭的負担が、農地を利用した収入に見合うものなのか、冷静に判断する必要があります。
農地は簡単に転用できないケースもある
農地を相続したものの「やはり自分には農地経営が難しいので宅地へ変えたい。」という理由で、安易に転用ができない場合もあります。
所有している農地が市街地にある市街地農地の場合は、農業委員会に届出だけで転用が可能です。
しかし、それ以外の農地は農業委員会に転用許可を申請する必要があります。その中でも、市街地周辺農地であれば許可申請をすると原則として転用が認められます。中間農地の宅地転用も可能ですが、純農地に限っては農作物の生産性が高い分、転用許可を求めても、まず農業委員会の許可は下りないと言われています。
農地を相続する際、農地区分もよく考えて引き継ぐか否かを検討しましょう。
デメリットだけではない! 農地相続するメリットとは?
農地を相続した場合、引き継いだ農地から収入を得られる可能性もあります。
被相続人の遺志を引き継ぎ農地経営
被相続人の生前の農業経営に興味を持ち、その経営を引き継ぎたい場合は、農機具・農業用設備を新たに購入する必要もなく農業へ従事できます。
特に被相続人の農業を手伝っていた相続人ならば、未経験から始めるわけではないので、自分が得た農作業のノウハウを活かし、安定した農業経営が期待できるはずです。
農地の貸し出しも可能
引き継いだ農地を自分で使用する予定がない場合、近隣の農家の方々へ貸し出すのも良い方法です。農地を貸せばまとまった賃料が得られるかもしれません。
農地を貸し出すときは原則として農業委員会に許可申請が必要です。ただし、こちらの許可申請ならば宅地に転用するわけではないので、許可が下りやすいはずです。
もし農地の借り手がなかなか見つからないときは、市区町村役場の窓口やJAに相談してみましょう。借り手を仲介してくれる制度(例:農地バンク等)も利用できるので、一人で探す手間が省けます。