【実話】「もう帰りなさい」「なぜ帰れなんて言うんですか?」…残業したがる部下を〈それでも退勤させた〉ワケ

【実話】「もう帰りなさい」「なぜ帰れなんて言うんですか?」…残業したがる部下を〈それでも退勤させた〉ワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

ワーク・ライフ・バランスの先駆者である佐々木常夫氏は、ダラダラ働くことは、部下の育成において百害あって一利なしと言っても過言ではないといいます。部下を伸ばし、限られた時間の中で成果を出す人材へと育てるにはどうすればよいのでしょうか? 佐々木常夫氏の著書『部下が伸びるマネジメント100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部抜粋し、見ていきましょう。

「まるで結果に結びつかない努力」は“軌道修正”が必要なことも

プロセスより結果を重視する。そう聞くと、とても冷淡に響くかもしれません。

 

努力しても結果に結びつかないこともある。結果だけで判断したら、かえって部下の信頼を失うのではないか。そんな懸念もあるでしょう。

 

しかし、プロとしてお金をいただいて仕事する以上、何も結果が得られないというのは問題です。プロとは限られた時間の中で効率よく仕事し成果を出すもの。「努力したけれど結果が出ませんでした」はあり得ません。

 

もちろん努力やプロセスも大事です。でも、まるで結果に結びつかないとしたら、それは真っ当な努力ではないという可能性も考えられます。何か見当違いな働き方をしてしまっているということです。

 

私の部下で、かつてこんな人がいました。メンバー全員が定時に帰れるよう効率化をはかり、残業せずに済む体制を築いたにもかかわらず、残業をしようとするのです。

 

「もう終わりにして帰りなさい」と言っても、その部下はなかなか帰ろうとしません。「こんなに重要な仕事をしているのに、なぜ帰れなんて言うんですか?」と言います。

 

しかし、当人がやっている残業は重要なものではありません。私は再度帰宅するよう促しましたが、残業をすると言って聞きません。そこで私はこう言いました。

 

「君は会社が求めていない仕事をしているんですよ。それは仕事ではなく趣味でしょう。趣味なら会社ではなく家でやりなさい」

 

その部下はしぶしぶ受け入れて帰りましたが、こういう努力は見当違いです。その作業が必要かそうでないかを見極められるよう、上司が指導し、本来すべき努力を教えてやらなくてはなりません。

 

結果を出せない場合、こうした過った努力をしていることも少なくありません。そこをしっかり指摘し、求められているものを常に意識して仕事をさせる。ダラダラ働いてしまう部下に、採算意識を植え付け、プロとしての自覚を促す。それもマネジメントの重要な仕事の一つなのです。

 

とは言うものの、世間ではまだまだ長時間労働をよしとする風潮がまかり通っています。それが正しいと思い込んでいる部下には、正しい働き方をきちんと伝えていくところから始める必要があるかもしれません。

小さな業務でも「プラン・ドゥ・シー」を徹底

仕事の進め方の基本は、「プラン・ドゥ・シー」です。

 

計画(プラン)を立て、実行し(ドゥ)、結果を評価(シー)する。評価が予測と違っていたり、問題が生じたりしたら、原因を探り、対策を考える。それをもとに、次の計画に活かしていく。おそらく知らない人はいませんよね。

 

ところが、みな案外これを怠ります。何のプランも立てず、場当たり的に業務をこなそうとする人がたくさんいます。

 

「まずは手近なところから」「普通はこうだろう」などといった思いつきや思い込みで走り始めてしまうわけですが、これは非効率の始まりです。

 

計画を立てずに走り出せば、途中で「この作業は不要だった」「二度手間になってしまった」と気づくなど、時間や労力の無駄遣いにつながることが多々あります。部下に必要のない失敗を繰り返させることにもつながりかねません。

 

「いつもムダばかり」「がんばっているのにミスしてばかり」といった残念な状況を作らないためにも、チーム内で「プラン・ドゥ・シー」を徹底していきましょう。

 

「プラン・ドゥ・シー」は、大きな仕事をするためのものとは限りません。会議の準備をする、期限までに資料を揃えるなど、日常的な業務にも当てはめ、活用していくことが大事です。

 

何のための会議や資料なのか、レベルや規模はどうか、準備するのに時間はどのくらいかかりそうか、目処をつけてから準備や資料作成に臨む。日常的な業務でプラン・ドゥ・シーを回せてこそ、大きな仕事で実行できると言っても過言ではありません。

 

「プラン・ドゥ・シー」では、「ミスを振り返る」というところが重要です。ミスを単なるミスではなく、結果を出すための手がかりとしていく。そこを意識して回していけば、部下の「ムダやミスばかり」の改善につながっていくはずです。

 

たとえば、「やり忘れ、伝え忘れ」がミスの原因なら、メモを取る・見返すなどの対策を促す。準備不足が原因なら、準備のための時間をもっと増やすようアドバイスする。小さなことですが、こうした細やかな振り返りと対策が結果を出すことにつながります。

 

小さな業務でも「プラン・ドゥ・シー」を徹底し、計画的に、自ら考えて動く習慣を部下に促していきましょう。

仕事は「計画的に」「締め切りを決めて」「最短コース」で

私は東レの課長時代、部下に次の3つを守って仕事に取り組むよう指導していました。効率的に仕事を進めるために不可欠な3項目をご紹介しましょう。

 

【①仕事は計画的に行う】

前項でもお伝えしたように、成り行きに任せて仕事を進めるのは非効率です。どんな業務も計画的に、プラン・ドゥ・シーで進めます。

 

私の場合、部下に「業務計画書」を提出させていました。毎週1週間でやる仕事を挙げさせて、それぞれどの程度の時間で行うつもりかを報告させ、必要に応じて修正を加えます。業務後は必ず振り返りを行い、計画と実績の差を検証し、次回に向けて改善策を話し合います。

 

【②締め切りを決めて行う】

計画を立てる際は必ず「締め切り」を設定します。「〇〇について調べ、レポートにまとめる」のような業務であれば、具体的にやるべき業務を列挙し、かかる時間の見当をつけ、それぞれをいつまでに終わらせればいいかを逆算し、日程を組みます。

 

それほど時間のかからない作業の場合も、「午前中に終わらせる」「今日中には片付ける」など締め切りを決めれば、ダラダラ仕事をすることはなくなります。

 

【③最短コースで行う】

業務はできるだけ速やかに終わらせることが重要です。さほど重要ではない仕事はカットするか、あるいは「手抜きをすること」も必要です。すべてを自分でやろうとするのではなく、他の力を借りられないか方法を考えてみます。

 

中でも、②の「締め切りを決めて行う」はむずかしいものです。設定してみたものの守ることができず、「残業しよう」「家に持ち帰ってやろう」となってしまうことも少なくないかもしれません。

 

でもそこで諦めず、締め切りに間に合わせるべく知恵を絞る。それが部下の仕事力を高め、結果を出す力にも通じていくはずです。部下を適切にサポートしつつ、「限られた時間の中で成果を出す」という仕事の仕方を教えていきましょう。

 

 

佐々木 常夫

株式会社佐々木常夫マネージメント・リサーチ 代表取締役

 

1944年秋田市生まれ。69年、東京大学経済学部卒業後、東レ株式会社に入社。家庭では自閉症の長男と肝臓病とうつ病を患う妻を抱えながら会社の仕事でも大きな成果を出し、01年、東レの取締役、03年に東レ経営研究所社長に就任。内閣府の男女共同参画会議議員、大阪大学客員教授などの公職も歴任。「ワーク・ライフ・バランス」のシンボル的存在と言われている。

 

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※本連載は、佐々木常夫氏の著書『部下が伸びるマネジメント100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

部下が伸びるマネジメント100の法則

部下が伸びるマネジメント100の法則

佐々木 常夫

日本能率協会マネジメントセンター

組織人として生きる大多数のビジネスパーソンに向けて、ビジネスパーソンとして生き抜くために必要な部下育成の考え方を紹介。主に30~50代の責任ある立場や、これからその立場になる人も含めて必読の一冊です。

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