(※写真はイメージです/PIXTA)

「住みたい街ランキング」の常連といえる、東急東横線沿線。敷設100年を迎えた東急は、私鉄ビジネスだけでなく、街づくりにも大きくかかわってきました。今回は、東急株式会社常務執行役員の東浦亮典氏が、「代官山」「中目黒」の変遷と、街としての可能性について解説します。※本連載は、東浦亮典氏の著書『東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

ハイセンスな店が並ぶ人気スポットに変貌した中目黒

〈中目黒〉

代官山の坂を下りていったところにある隣の「中目黒駅」は、かつては代官山と比べるといまひとつパッとしない雰囲気の街でした。

 

しかし、渋谷・代官山の賃料が高騰したこともあり、センスはあるけれどあまりお金はないレストランやショップのオーナーが目黒川沿いの賃料の安かった物件で個性的なお店を開店します。そうしたお店が徐々に軒を連ねて、中目黒駅から田園都市線の池尻大橋駅方面まで繋がると、目黒川沿いをそぞろ歩きしながら買い物や食事が楽しめるとあって人気のスポットに変貌しました。

 

また旧国鉄清算事業団上目黒宿舎の跡地利用の行方がどうなるのかが長年注目されてきましたが、東京都と目黒区の「上目黒一丁目プロジェクト」の公募により「東京音楽大学」が事業予定者として選定され、2019年4月に「中目黒・代官山キャンパス」として開校しました。すでに目黒区とも区民向けの音楽講座で連携しているほか、この地域に新たな文化の香りを持ち込んでくれています。

 

以前の中目黒は、現在の目黒区役所がある中目黒銀座商店街方面が中心だったと思います。とはいえ、地元密着の個人店が並ぶ、よくも悪くもどこにでもあるような商店街でした。

 

一方、ここ10年くらいで中目黒の街のイメージの印象を変えてきたのは、山手通りと目黒川沿いにも細長く伸びた一帯でしょう。

 

2014年のクリスマスシーズンには、目黒川の両側の桜並木を青色LEDの装飾で埋め尽くした「青の洞窟」というイルミネーションイベントが開催されたのですが、これが大ヒットして、ものすごい人出となりました。あまりに人を集めすぎてしまったため近隣から苦情がきて、イベントは渋谷に移転してしまいました。

 

しかし、毎年の桜のシーズンの目黒川沿いの賑わいは驚くほどです。現在の中目黒の集客力、人気はほかの街にはないものを感じます。

 

2009年に山手通りの沿道にエグザイルで有名な芸能事務所「LDH JAPAN」の本社が移転してきたあたりから、表通りにも魅力的な店舗が増え、いまでは目黒川沿いにも負けない人気の通りになってきています。

 

印象の希薄さに課題…次の再開発で期待される「駅前エリア」

十分な集客力をもつようになった中目黒周辺ですが、どこか印象が希薄なのは、駅の改札前がいきなり山手通りの横断歩道になっており、駅前の印象が薄いからかもしれません。

 

駅周辺には再開発でできた「中目黒GT」や「中目黒アトラスタワー」や東横線の高架下を活用してグルメ店を集めた「中目黒高架下」などもあり、確実に中目黒の魅力の一角を構成してはいますが、全体的に中小規模の店舗が中心で、かつ広域に散らばっていることが中心点不在の理由かもしれません。

 

そんな中、次の再開発で期待されるのが、東急ストアの本社と中目黒店がある敷地を含むエリアです。東急ストアはあるものの、残念ながら東急グループは当該地区に資産は保有しておらず、土地を保有している丸紅都市開発と東急が事業協力者として参画しています。

 

まだ基本計画段階で開発内容や開業時期などは発表されていませんが、駅前の山手通りと目黒川沿いを貫く街区の開発によっては、中目黒が新しく生まれ変わる可能性があります。

 

 

東浦 亮典

東急株式会社

常務執行役員

 

※本連載は、東浦亮典氏の著書『東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ

東急百年 私鉄ビジネスモデルのゲームチェンジ

東浦 亮典

ワニブックス

東急電鉄に所属していた2018年に、前作『私鉄3.0』で「電車に乗らなくても儲かる私鉄の未来」を提言した東浦亮典氏。あれから4年、電鉄業界はコロナというこれまでにないパンデミックに見舞われた。テレワークの普及で働き方が…

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