「筋線維は3つのタンパク質で構成される」
収縮タンパク質
筋収縮で力を発揮する「収縮タンパク質」には、「ミオシン」と「アクチン」の2種類がある。筋原線維を構成するタンパク質の60%を占めるのがミオシン。細長いミオシン分子が束になることで、1本の太い「ミオシンフィラメント」を形成している。
アクチンも細い線維状のタンパク質で、「トロポニン」「トロポミオシン」とともに「アクチンフィラメント」を構成している。この2つのフィラメントが、ATPをエネルギーとして利用し、筋収縮を起こしている。
調節タンパク質
筋収縮の調節役となっているのが「調節タンパク質」。
「トロポニン」と「トロポミオシン」の2種類がある。筋収縮においては「カルシウムイオン」が必要だが、その調節に担っているのがトロポニン。2本のアクチンの間に並んでおり、カルシウムイオンと結合することで、ミオシンとアクチンをつなげてくれる。
トロポミオシンはアクチンフィラメントの溝に沿って走っており、フィラメントの構造を安定させている。
構造タンパク質
筋肉には約10種類の構造タンパク質があり、筋原線維の位置や形状、弾力性、伸展性を維持している。中でも重要なのは「タイチン/コネクチン」で、25,000個以上のアミノ酸から構成され、通常のタンパク質の50倍もの大きさがある。
骨格筋における量はアクチン、ミオシンの次に多く、第3の収縮タンパク質ともされる。この巨大なタイチンが、ミオシンフィラメントの位置を安定させている。
「筋トレとは骨格筋の遺伝子が働き出す″スイッチ″である」
筋肥大は、1本1本の筋線維が太くなることで生じるが、それは筋原線維の主役である「収縮タンパク質」のアクチンやミオシン、そして、「調節タンパク質」「構造タンパク質」が増加することを意味する。これらの合成には、それを促す″刺激″が必要だ。
細胞の中には、多くのタンパク質分子が存在する。ここに環境変化が起こると、細胞は生存のためにタンパク質を合成する。
その際には細胞核にある「DNA(デオキシリボ核酸)」の遺伝情報を、「mRNA(メッセンジャーRNA)」という形でコピーし、その情報をもとにアミノ酸を結合していき、必要なタンパク質をつくっている。
DNAという設計図をもとに、アミノ酸という建材から、アクチンやミオシンなどの家を建てているわけだ。
ここでは最初の環境変化が重要となるのだが、筋肉においてその代表格が、激しい運動。トレーニングは、激しい運動に対応するべく遺伝子に″働きなさい″とスイッチを入れることなのだ。
トレーニングを行うと、力学的および化学的な刺激がスイッチとなり、骨格筋内でmTORC1(同書で詳しく解説)が活性化し、遺伝子の転写作業が始まると考えられている。最終的には筋線維が太くなるハイパートロフィー(筋肥大)が実現する。
岡田 隆
日本体育大学体育学部
教授・ボディビルダー