(※写真はイメージです/PIXTA)

相続における最低限の取り分である「遺留分」。相続人には遺留分をもらう権利がありますが、渡さずに済むことは可能なのでしょうか? 実務に精通した弁護士陣による著書『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より、解説します。

2.遺留分対策

遺言を残しても「遺留分侵害額請求」により金銭支払い請求を受けてしまう

長男Cが相続人である場合、子であるため、遺留分があります。遺留分は、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の取得を一定の法定相続人に保障するために、被相続人の意思にかかわらず、被相続人の財産から最低限の取り分を確保する制度です(民法1042条以下)。

 

相続人が保障されたはずの遺留分に満たない財産しか得ることができない場合、被相続人から遺産を受け取った受遺者又は受贈者に対し、侵害された遺留分に相当する金銭の請求(遺留分侵害額請求)をすることができます(民法1044条)。

 

そのため、Aが遺言によって、長男Cには一切財産を相続させなかった場合でも、長男Cから、他の相続人に対し、遺留分侵害額請求をされてしまいます。そこで、できるだけ当該相続人に遺産を相続させたくない場合には、遺留分の対策を講じる必要があります。なお、遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に認められるため、相続人が兄弟姉妹である場合には、遺留分はなく、対策は不要です。

 

ハードルは高いが…遺留分の放棄を求める

(1)遺留分の放棄

遺留分を有する相続人であっても、被相続人の生前に、遺留分を放棄することができます(民法1049条)。遺留分を放棄するときは、家庭裁判所に対して遺留分放棄の許可を求める審判を申し立てて、家庭裁判所の許可を得る必要があります。遺留分の放棄が認められれば、その相続人は遺留分がありませんので、遺言で当該相続人以外のみに遺産を取得させても、遺留分侵害額請求の問題は生じません。

 

しかし、被相続人が、当該相続人に対し、単に遺留分の放棄を求めても、了承を得て家庭裁判所へ審判の申し立てをすることは難しいため、一定の財産を贈与する等、一定の代償措置を講ずる必要があると考えられます。

 

なお、被相続人の相続開始後は、相続放棄をしてもらい、相続人ではなくなるという対応が考えられますが、この場合も、遺留分放棄の場合と同様に、一定の財産を贈与する等、一定の代償措置を講ずる必要があると考えられます。

 

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※本連載は、東京弁護士会弁護士業務改革委員会 遺言相続法律支援プロジェクトチーム編集の、『依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務』(ぎょうせい)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

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