(※画像はイメージです/PIXTA)

マーケティング学界の権威、フィリップ・コトラーによる最新のマーケティング理論「マーケティング4.0」とは一体どんなものなのでしょう? アップルの事例をもとに解説します。1997年9月23日、スティーブ・ジョブズは上層部のマネジャーとスタッフをアップル本社の講堂に集め、15分間のスピーチを行いました。テーマは「マーケティングとは」。そこで彼はなにを語ったのでしょうか。

ジョブズが実践したマーケティング

“Think different.”キャンペーン後のアップルの快進撃には目覚ましいものがあります。iPod、iPhone、iPad――それらは単に新しい製品というだけでなく、ジョブズが望んだように、社会に変革をもたらしました。

 

ジョブズが社内スピーチで語ったこと、そしてその後のアップルの動向は、私たちにマーケティングのひとつのあり方を鮮やかに指し示しています。

 

また、そのあり方が非常に今日的な新しいものであるという「直観」――それは、先ほど触れたナイキの価値観、大阪なおみの行動に関連したスポンサーとしての「態度」が、一定数の人々の支持を得たという傍証を得ています。

 

では、そこに理論的な裏付けを見出すことはできるのでしょうか。ここからは、ジョブズが実践したマーケティングを理論的に捉え直してみたいと思います。

 

そもそもマーケティングとは?

マーケティング学界の権威、フィリップ・コトラー(以下、「コトラー」)によるマーケティングの定義は以下のようなものです。

 

「ニーズに応えて利益を上げること」

 

わかりやすい言葉で実にシンプルに表現されているため、言葉的な意味は十分、理解できます。しかし、筆者の解釈では、それは「企業活動の原理そのもの」あるいは、「企業の本質的な機能」と同義です。

 

それで合っているのでしょうか?

 

2016年にコトラーはヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワンとともに『マーケティング4.0』を著し、翌2017年、日本でもその訳本が刊行されました※2。この本はコトラーによる最新のマーケティング理論と位置づけられます。

 

そのなかに、以下のような記述があります。

 

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「marketing」という言葉は、「market-ing」と表記すべきだと、われわれはずっと思ってきた。
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なぜなら、マーケティングとは変化し続ける市場がその対象であり、最先端のマーケティングを理解するためには、市場が近年どのように進化してきたかを理解する必要がある―このように表記すれば、それが明確に意識されるからだというのです。

 

つまり、マーケティングは、「動的なもの」であるという捉え方です。

 

ジョブズのマーケティングのあり方を「新しい」と感じる、それは従来のマーケティングとはなにかが違うという直観ともいえますが、ダイナミクスという観点をもてば、そうした直観を抱くのは当然であるといえます。

 

「マーケティング1.0」から「マーケティング4.0」へ

ここで、「マーケティング4.0」にいたるまでのマーケティング理論の変遷を概観したいと思います。

 

「マーケティング1.0」は「生産主導」でした。タスクは、製品の機能を追求し、生産した製品をいかにして売るかというものでした。売るためにいい製品を作る、いい製品を作れば売れる、という段階です。

 

マーケティング2.0は「顧客中心」です。この段階では、多様化した顧客にほしがられるもの、必要とされるもの、つまり売れるものはなにかを追求し、他社よりいい製品を作るという「差別化」がそのストラテジーとなりました。

 

それに続く「マーケティング3.0」では「人間中心」という、それまでのマーケティングからの大きな変化を論じています。ソーシャルメディアによって発信する力を持ち始めた顧客を、単なる購買者ではなく、

 

「マインドとハートと精神(スピリット)を持つ全人的存在」

 

であると捉え、マーケティングの未来は、人間的価値を支持し表現する製品・サービスや企業文化を産み出すことにあるという主張です。これは、前述のアップルの価値観、マーケティングの方向性と完全に合致します。

 

この理論は書物として2010年に刊行され、ベストセラーになっています。ただ、2010年以降、デジタル・エコノミーはさらに急速に進み、顧客の行動パターンだけでなく顧客そのものが変容し、それに伴って市場にも大きな変化が訪れています。

 

『マーケティング4.0』は、「マーケティング3.0」を補完し、その自然な発展形として、そのコンセプトを実践するために必須の理論とフレームワークが示されています。

 

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