(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2023年5月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

8.まとめ

【債券】

米国の長期金利は、振れを伴いながら緩やかに低下する展開を予想します。底堅い雇用や粘着質のインフレが続くものの、金融不安の高まりで金融環境が引き締まることから、FRBの利上げ停止が視野に入ってきたとみられます。先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれ、緩やかに低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締めを続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行きやや上昇する展開を予想しています。

 

【株式】

S&P500種指数採用企業の23年1-3月期の増益率(純利益ベース)は前年同期比▲0.1%、除くエネルギーセクターで同▲1.8%でした(5月26日。リフィニティブ集計)。減益となりましたが、決算発表が進むにつれ減益率は低下する展開でした。一方、TOPIX採用企業の23年1-3月期の純利益は前年同期比+31.3%、22年度(22年4月~23年3月)は前年度比+4.3%でした(6月1日。3月期決算企業で除く金融、QUICK集計)。

 

6月の株式市場は、日米ともに大きな上昇を記録した後だけに一旦上値が重くなる可能性があると思われます。6月は13-14日のFOMCで利上げ停止となるか、15-16日の日銀金融政策決定会合で長短金利操作などの政策修正があるかなど、年後半の市場を展望する上で大きな分岐点となりそうです。一方、日本は株主総会のシーズンとなります。今回は、東京証券取引所が上場企業に資本コストや株価を意識した経営に取り組むよう要請したこともあり、株主総会は自社の方針を示す絶好のチャンスです。企業と投資家による対話も注目され、企業の選別が株価に表れる可能性もありそうです。

 

【為替】

円の対米ドルレートは、FRBの利上げが最終段階に入りつつあるとみられることから、もみあいながら緩やかに上昇する展開を予想します。先行きは米国の景気とインフレが鈍化するため、FRBの利上げ停止と日銀の金融政策修正が意識され、円が小幅に上昇する展開を想定しています。円の対ユーロレートは、レンジ内でもみ合いながら緩やかに上昇すると予想します。ECBの利上げ継続がユーロのサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が円の買い材料となるとみています。また、円の対豪ドルレートは、もみ合う展開を予想しています。相対的に堅調な豪州景気がサポート要因となる一方、日銀の金融政策修正が意識されるためです。

 

【リート】

米国リート市場は、FRBの利上げ長期化観測や商業用不動産に対する融資厳格化が意識され、当面不安定な動きになることが見込まれます。ただし、米国経済はリセッションに陥るとしても、比較的軽微なものにとどまるとみられ、過度な景気後退懸念が和らげば、米国リート市場は緩やかに上昇するとみています。欧州リート市場は、ECBによる金融引き締めの継続から当面上値の重い展開を想定します。日本リート市場は、景気回復の動きが続くものの、日銀の金融政策の不透明感から当面レンジ内でもみ合うとみています。アジア・オセアニアリート市場は、景気回復に伴いシンガポール中心に緩やかに上昇するとみています。

 

(2023年6月2日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「日本株の上昇」が際立った5月の株式市場…6月はいったん「上値が重くなる」可能性。先月のマーケットの振り返り【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

【ご注意】
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