3.金融政策
<現状>
FRBは、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.75~5.00%から5.00~5.25%へ引き上げました。声明文では、金融不安がくすぶっていることを踏まえて、利上げ打ち止めの可能性を示唆しました。ECBは5月の理事会で0.25%の利上げを決め、前回までの3会合連続の0.50%から利上げ幅を縮めました。保有資産の圧縮については、7月には再投資を終える予定です。日銀は、植田和男新総裁の初めての定例会合となる4月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めました。注目されていた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の修正は見送りました。
<見通し>
FRBは、6月のFOMCで利上げを停止し、FF金利を5.00~5.25%の水準に据え置くと予想しています。インフレと金融不安のバランスを睨みながら、年内はFF金利を維持すると想定しています。ECBは、高止まりしている食品価格やコアインフレを抑制するため、利上げを続ける見通しです。6月と7月にそれぞれ0.25%の利上げを実施し、預金ファシリティ金利を3.75%まで引き上げた後、据え置くと予想しています。日銀は、7月にイールドカーブ・コントロールにおける長期金利の変動許容幅を±1%程度に拡大すると予想しています。
4.債券
<現状>
米国債券市場は月後半に軟調な展開となり、10年国債利回り(長期金利)が上昇しました。4月の雇用統計が雇用の底堅さを示し、米景気悪化への過度な懸念が和らいだことや、FRB高官から利上げ停止に慎重な発言が相次ぎ、FRBによる利上げが続くとの観測が高まったことに加えて、米政府の債務上限問題も嫌気されて、米長期金利は上昇しました。一方、ドイツの長期金利は、ECBによる利上げ継続が見込まれるものの、景気減速見通しからやや低下しました。日本の長期金利は、日銀による政策修正観測が後退したことから小動きとなり、ほぼ横ばいでした。また、投資適格社債については、国債と社債の利回り格差が小幅に拡大しました。
<見通し>
米国の長期金利は、振れを伴いながら緩やかに低下する展開を予想します。底堅い雇用や粘着質のインフレが続くものの、金融不安の高まりで金融環境が引き締まることから、FRBの利上げ停止が視野に入ってきたとみられます。先行きはインフレの鈍化と景気減速が見込まれ、緩やかに低下する展開を予想します。欧州の長期金利も、賃上げによるインフレ圧力などからECBが金融引き締めを続けるものの、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。日本の長期金利は、日銀の政策修正により長期金利の許容変動幅が拡大され、先行きやや上昇する展開を予想しています。