平成のデフレ期は現金を持っているだけでよかった
1990年代半ば以降は、バブル崩壊による金融不安や長期的な不景気によって、会社員の給料がほとんど伸びない状況に陥りました。
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均給与は、1997年に467.3万円でピークをつけ、2018年には440.7万円へと減っています。
平成の30年間を通じて、日本人は、少なくとも給与の面では、豊さを実感できない時間を過ごしたのです。
それでも多くの日本人が、運用で資産を増やそうという気にならなかったのは、物価がほとんど上がらず、時には前年比でマイナスになる「デフレ経済」に直面していたからです。
2021年基準の消費者物価指数(総合)の数字を見ると、1989年度が87.7なのに対し、2018年度は99.6ですから、平成の30年間の平均で見ると、年0.4%しか上昇していなかったことになります。
デフレによって物価が下がる局面では、現金をそのまま持っているだけで資産価値が上がっていきます。
日本人は平成の30年間を通じて、現金を持っているだけ、もしくはほとんど利息が得られない超低金利の預貯金に資産を預けっぱなしにしても、何ら問題がなかったのです。
よく、日本の個人は保有している金融資産の半分超を現預金にしているという話がされます。
日本銀行が定期的に発表している「資金循環統計」によると、2022年12月末時点における個人金融資産の総額は2,023兆円で、そのうち55.2%にあたる1,116兆円が現金・預金で保有されています。
このように、資産が現金・預金に偏在している点を指摘して、「日本人は保守的だからリスクを取らない」とか「日本人は農耕民族だから投資は苦手」といった杜撰な分析をする人もいますが、そうではなく、これまで日本人は、リスクを取った資産運用をせずとも、何とかやってこられたというだけのことなのです。
インフレヘッジをしなくていい時代は終わる
でも、恐らくこれからは、そんなことをいっていられない状況に直面するでしょう。
解決の兆しが見えてこないウクライナとロシアの紛争は資源・エネルギー価格の上昇要因ですし、米国は世界中にデフレを輸出してきた中国をサプライチェーンから外そうとしています。
中国でモノをつくらないようになれば、安い労働コストを活用できなくなる分だけ、物価に上昇圧力がかかります。
これに加えて日本の場合、再び円安が加速する事態になれば、輸入物価の上昇によって国内でインフレ懸念が広がるでしょう。
このように考えると、これからの時代、現金と預金に金融資産を集中させ続けると、インフレによって資産価値が目減りするリスクに直面する恐れがあります。
だからこそ、資産運用を真剣に考える必要があるのです。