理由2|変動金利特有の「5年ルール」があるため、金利の上昇に気づくのが遅れる
住宅ローンを返済中の人が変動金利から固定金利に切り替えることが難しい2番目の理由として、変動金利型住宅ローンの月々の返済額が見直しされるタイミングが5年に一度といったルール上の問題が挙げられます。俗にいう「5年ルール」のことです。
【5年ルール】
変動金利型住宅ローンは半年ごとに金利が見直しされるが、月々やボーナス時の返済額は5年間変わらないルール。金利の変動は反映されているので、月々返済額の内訳となる元金と利息の配分を調整して月々の返済額を変えないようにしている。
金利上昇時は元金の返済に充てられる割合が減り、利息を支払う割合が増えるので、結果として「元金の減りが遅くなる」のがデメリットとなる。
[図表2][図表3]からおわかりいただけるように、金利が上昇した場合、利息の計算上はその都度金利の上昇が反映されていますが、月々の返済額を5年間は変えないために、金利が上がったことに気づくのが遅くなるという落とし穴があるのです。
変動金利で借りた場合、向こう半年間の金利しか確約されていないため、返済がスタートした後も半年ごとに返済予定表が金融機関から送られてきます。
返済予定表を注意して見ていれば金利が上がっていることに気がつくのですが、銀行から引き落としされている金額自体が変わらないので、気づかない人も多くなっています。
また、前に述べたように、金融機関もペーパーレスの流れが進んでおり、返済予定表を書面では郵送せず、ネットバンキングの画面で確認するしかないケースが増えているのが現状です。
そうなると、半年ごとにネットバンキングで自ら金利をきちんと確認する人は少ないので、ますます金利の上昇に気がつきにくいといった悪循環に陥ります。
ところで、全期間固定金利の代表的な商品であるフラット35には、当初5年間もしくは10年間、金利の優遇を大きく受けられる「フラット35S」という制度があります。
筆者が顧問契約をしているお客様には、6年目、11年目の金利が上がるタイミングで家計や住宅ローンの見直しのお声がけをしているのですが、金利や返済額の上昇を認識しているお客様はほとんどいません。
それくらい、実際に返済が始まると、私たちは金利や返済額に無頓着(むとんちゃく)になってしまうということです。
ましてや、変動金利特有の「5年ルール」といった複雑なルールがあると、なおさら金利上昇に気がつかないのも無理がないと思います。