「変動金利」で一度借りると、途中で「固定金利」に切り替えるのは難しい
変動金利で住宅ローンを借りている方から「金利が上がったら固定金利に借り換えればいいですよね?」とよく聞かれます。
確かに、高度経済成長期のように金利が右肩上がりに上昇を続ける場合は、金利が上がり始めた初期段階で固定金利にパッと切り替えればいいのですが、実際にはそう簡単ではありません。
一度返済が始まると、変動金利から固定金利に切り替えるのが簡単ではない理由を3つ挙げます。
理由1|短期金利が上がるころには長期金利はとっくに上がっている
まず1番目の理由に、長期金利のほうが短期金利よりも先に上がるという問題があります。
金利には短期金利と長期金利がありますが、短期金利は基本的には中央銀行(日本では日本銀行)の金融政策の影響を受けて金利が決定されます。
一方、長期金利は債券市場の需給バランスや市場参加者の思惑で金利が変動するので、その時々の政治・経済、為替相場など、国内外での出来事にすぐに反応した動きを見せます。
2022年年初から続いている長期金利の上昇は、まさに海外でおこっている金利上昇の動きに即応しておこった現象です。
対する短期金利は、中央銀行が経済状況をしばらく注意深く見守ったうえで、これは中央銀行として対処が必要と判断したときに政策金利の上げ下げを決定するものなので、長期金利よりもだいぶ遅れた動きを見せます。
しかも、現在は、日本銀行が本来介入しないはずの長期金利に関しても、国債を大量購入するといった非伝統的な手法で金利を抑制している状況です。そのため、短期金利と長期金利の差が小さくなっています。
具体的に、住宅ローンの変動金利と35年固定金利を比較してみると、大規模金融緩和がおこなわれる前の2010年ごろはその差が約2%ありました。
2023年4月現在、たとえば、りそな銀行では変動金利は0.37 %、35年固定金利は1.345%となっており、長期金利が上がってきているとはいえ、まだその差は1%程度です。
今後、大規模金融緩和が終了し、金利が正常化するなかで長短期金利ともに引き上げられる局面がやってくるかもしれませんが、そのときには長期金利はいまよりもだいぶ上がっている可能性があります。
そうなると、いくら金利を固定できるといっても、低い金利からより高くなった金利への借り換えは、月々の返済額の負担増を考えるとなかなか決断ができないものです。