理由3|金利は一本調子に上がるわけではない
最後の理由として、一般的に金利は右肩上がりに上昇を続けるものではなく、上がり下がりを繰り返すものであり、それだけに「変動金利から固定金利への借り換えのタイミングを計るのは難しい」という問題があげられます。
私が銀行員だった当時、2006年から2007年にかけて金利が2回連続で上がったことがありました。短期プライムレートが+0.25%ずつ2年連続上昇し、2005年には2.375%だった都市銀行の変動金利(基準金利)が2007年には2.875%へと上昇しました。
2年連続で上昇したため、この先も上昇が続くのではという憶測が広がり、銀行には連日、変動金利で借りていたお客様が固定金利に借り換えにやってきました。
当時、全期間固定金利は3%近い金利でしたが、大規模金融緩和政策以前の全期間固定金利としては妥当な金利であり、何よりも金利先高観が高まっていたので、変動金利から固定金利に借り換えしたいというニーズが高まった時期です。
しかし皮肉なことに、その後間もなく金利は再び下がりました。意識の高いお客様のなかには、変動金利から固定金利に借り換えたあと、再び変動金利に借り換えるという動きも見られました。
借り換えには、一般的にローン残高の3%程度の費用がかかりますが、何度も借り換えをすると、その分余計な費用がかかります。
実際には、借り換えにかかる諸費用を自己資金でだす人は少なく、諸費用も借りる人が多くなっていますが、短期間に余分な借り換えをした分だけ、借り換え直後のローン残高が増えてしまったことになります。
金融リテラシーが高く、金利上昇に敏感に反応した人ほど損をしてしまったという皮肉な話ですが、それくらい変動金利から固定金利へ切り替えるタイミングを見計らうのは難しいということです。
平井 美穂
平井FP事務所
代表ファイナンシャルプランナー