民法改正で来年から「相続登記」が義務化へ
仮に親が亡くなって相続が発生すると、実家の所有権は、相続人である子どもや配偶者に移転するため、登記を新しい所有者名義に変更する必要が出てきます。これを「相続登記」といいます。
相続で取得した実家を売却するような場合には、名義を変更しなければならないので、相続登記を行うのが自然です。ただし、夫が亡くなってもそのまま配偶者である妻が住み続けるケースや、親が亡くなっても同居していた子どもが住み続けるケースでは、手続きも面倒でお金もかかるため、実際には「相続登記を行っていない」という状況も多々発生していました。
このような状況が続くと、登記が変更されないまま何世代分もの相続が発生してしまい、「さあ売却しよう」と思ったときには土地の共有者が何十人、ときには何百人になっていた……なんてケースも実際に存在します。
このような状態になると、戸籍をたどって相続関係図を作成するだけでも一苦労ですし、大人数の意見もまとまらず、そのまま放置されてしまうケースも少なくありませんでした。
「相続登記の義務化」とは?
こうした事態を受けて、令和6(2024)年4月1日からスタートするのが「相続登記の義務化」です。不動産の相続を知ってから3年以内に相続登記の申請をしなかった場合、10万円以下の過料(金銭の納付を命じる罰則)の罰則を受けることになりました (改正不動産登記法 第164条)。
この10万円以下の過料がどの程度の頻度で調査され、課されていくのかはまだわかりません。しかし、法律違反になってしまう以上、相続が発生したら、コストや手間がかかっても、しっかりと相続登記を進めていく必要が出てきました。
改正前から放置していた物件は義務化の対象?
さて気になるのは、「改正前から相続登記を放置していた物件を抱えている」というケースです。こういった場合も罰則を受けるのでしょうか。
実は、改正法の施行日(令和6年4月1日)前に相続が発生していたケースについても、登記の申請義務は課されます。ただし、施行日から3年間の「猶予期間」が設けられています。
この3年間というのは長いように思えても、相当数の相続人がいたり、複雑な事情があったりと、対処期間としては「決して長くない」というのが筆者の感覚です。えてして、相続関係の訴訟やトラブルは、3~5年ほどの対応期間になることも少なくないからです。
ただし、たとえトラブルが残っていたとしても、戸籍上確認できる相続人の「共有名義」で登記を移転しておけば、この罰則を回避できます。
もっとも、「3年も時間があるからあとでいいや」と思って期限ギリギリに依頼すると、登記の前提となる戸籍等の収集にも時間がかかりますので、期限内に間に合わないという事態も十分ありえます。相続登記が義務化されるのは確定事項ですので、面倒くさがらずに、早め早めに手をつけていくべきでしょう。
■上も下も右も左も、全員いなくなった…手当たり次第壁を叩く騒音被害!経営するアパートにやってきた「迷惑入居者」の実録【不動産鑑定士兼税理士大家が解説】