(写真はイメージです/PIXTA)

33年ぶりの日経平均株価3万1,000円台回復した。今後の見通しはさらなる上昇はあるのか、それとも下落に転じるのか。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏による考察です。

5―日本企業の業績も楽観できない

日本企業の23年度の業績見通しが出揃った。予想純利益の合計額は28.8兆円で22年度比3.3%減を見込む。長引くインフレ、海外景気の減速懸念などを背景に慎重な見通しとなったが、市場では「事前に心配されたほど悪くなかった」と受け止められた。

 

実際、市場予想(0.3%増)と比べても遜色なく特段のサプライズはなかった。それどころか4月以降の上昇相場を支援する安心材料になったようだ(図表3)。

 

【図表3】
【図表3】

 

日本では例年、年度初めに企業が公表する業績予想は保守的で、四半期ごとの決算発表のタイミングで見通しを上方修正するのが“恒例行事”となっているが、23年度は少し様子が違うようだ。会社予想と市場予想の乖離率(会社予想÷市場予想▲1)を集計すると(図表4)、22年度は市場予想よりも保守的な「▲10%~▲5%」とする企業が最も多かった。ところが23年度は「±5%以内」で市場予想と同程度の企業や、市場予想より10%以上強気の見通しを公表した企業が多い。

 

この背景には先述の「PBR改善要請」が影響している可能性が考えられる。つまり、あまり保守的な業績見通しを公表すると株価(PBR)が下落しかねない。6月に控えている株主総会で追求されるのを回避する狙いもあって、例年よりも強気な業績見通しを公表した可能性だ。

 

企業側の真意はさておき、期初予想があまり保守的でない以上、今後の上方修正余地は乏しい。さらに、筆者が懸念するような海外景気の減速と円高が実現すれば、輸出企業を中心に業績が圧迫され株価下落は避けられないだろう。仮に目先の株価が一段高になったとしても、深追いは禁物だ。

 

【図表4】
【図表4】

6―臨時リバランスの検討を

機関投資家などのバランス型運用では「リバランス」といって、高くなった資産を売却して、安くなった資産を買うという資産配分の変更を“定期的に”行うのだが、つみたてNISAなどを活用した個人の資産形成でも、臨時の「リバランス」の検討をお勧めしたい。【図表5】のとおり、欧米の主要株価指数や全世界株式(MSCI-ACWI)と比べて、直近の日本株の上昇は突出している。

 

ポートフォリオにおける日本株のウェイトが急上昇し、自身が当初にイメージしていた資産配分の上限を超えているケースもあるだろう。その場合は日本株を一部売却して他の資産を購入する「リバランス」を実施すべきか検討することをお勧めする。

 

せっかく上昇している日本株を売るのは抵抗があるだろう。目先、日本株がさらに上昇する可能性もあるが、長期の資産形成では機械的に淡々と運用を続けたほうが結果的にうまくいくことも多い。そもそも、そんな大儲けを狙って資産形成を始めたのか、初心を思い出してみよう。

 

なお「リバランス」を実施する場合は、資産配分の上限超過分を全て売却してもよいし、いつ売るのがベストか悩むくらいなら1ヵ月程度の間に超過分を何度かに分けて売却するなどしてもよいだろう。いずれにしても、感情に流されないことが肝要だ。

 

【図表5】
【図表5】

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年5月23日に公開したレポートを転載したものです。

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