日経平均33年ぶりの高値へ…「史上最高値・3万8,915円」更新となるか【ストラテジストが解説】
1―日本株の上昇が止まらない
日経平均株価の5月23日の終値は3万1,086円となり、1990年7月以来、約33年ぶりの水準を回復した。22年末から5ヵ月足らずで20%近い上昇という急ピッチな株価上昇がホンモノか、先高観も強まる株式市場に死角はないか。
2―海外投資家が日本株を再評価
今回の株価上昇に乗り遅れた日本の投資家も少なくないだろう。というのも、急ピッチな株価上昇は海外投資家が主導したからだ。米国の地銀をめぐる混乱などを背景に3月は海外投資家が日本株を売り続けた。ところが4月に入ると一転して買いに回り、4月第1週から5月第2週(12日)まで7週連続、合計2.9兆円の買い越しとなった(図表1)。
海外投資家が日本株を再評価した理由はいくつもある。まず、日本がデフレを脱却するのではないかという期待だ。これまで日本株の「大敵」とされた3つの“D”、すなわちDeflation(デフレ)、Demography(人口減少)、Debt(債務)のうち、「1つが外れるかもしれない」との関心が高まったという。背景には今春の大幅な賃上げが来年以降も続くかもしれないといった期待に加えて、著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本株の追加購入を示唆したことも挙げられる。
バフェット氏は日本の大手商社5社の株式を保有していることで有名だが、それら商社株の買い増しだけでなく、「商社以外にも常に注目している企業がいくつもある」といった趣旨の発言をしている。これまで日本株に見向きもしなかった海外投資家の関心にバフェット発言が点火した格好だ。
欧米と比べて相対的な日本の優位性も影響している。強烈なインフレに見舞われている米国や欧州では、中央銀行が政策金利を急ピッチで引き上げてきた。米FRB(連邦準備制度理事会)はまもなく利上げを停止するとみられているが、23年末まで5%を超える高水準の政策金利を続ける構えで、株式市場が期待する早期の利下げを完全に否定している。米国よりもインフレ率が高い欧州では、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁が「雇用を犠牲にしてでもインフレ退治を優先する」といった趣旨の発言を直近でしている。
一方、新型コロナウイルス感染症をようやく5類に引き下げた日本は、行動制限の緩和やインバウンド増加による消費拡大が期待されている。さらに日銀は異次元緩和を続ける構えを見せており、少なくとも現時点では金融緩和策の修正に極めて慎重姿勢だ。長引く高インフレと高金利の長期化で景気減速懸念が強まる欧米から、相対的に安全な日本に海外投資家が投資資金をシフトさせた。
さらに、東証による「PBR(株価純資産倍率)改善要請」も海外投資家の日本株再評価に繋がったようだ。これはPBRが1倍未満で一般に「上場失格」とされる上場企業に対して、市場の評価を高めるための具体的な取り組みなどを公表するよう要請したものだ。正式な要請は今年3月末だったが、その前後から大規模な自社株買いを決めたり、経営計画に「PBR1倍以上を目指す」と明記する企業が相次いだ。こうした動きを見た海外投資家が、日本株市場の底上げ、継続的な活性化を期待したのかもしれない。
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