中小企業の新卒3年以内離職率「4割」…小さな会社で新入社員がすぐに辞める「根本原因」【マネジメントのプロが解説】

中小企業の新卒3年以内離職率「4割」…小さな会社で新入社員がすぐに辞める「根本原因」【マネジメントのプロが解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省の発表によると、2019年卒の入社3年以内の離職率は全体平均で約3割、そのうちの中小企業における離職率は約4割です。事業規模が小さい企業のほうが全体平均を大きく上回っていることがわかります。では、なぜ事業規模の小さな会社は新入社員がすぐに辞めてしまうのでしょうか? マネジメントのプロの堀江貴寛氏が根本的な原因を解説します。

入社3年以内の離職率「約3割」…新卒の離職事情

(※画像はイメージです/PIXTA)
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離職率とは、一定の期間に会社を辞めてしまった労働者の割合を示す数字です。 基本的な計算式は、

 

離職率=設定した期間の離職者数÷期首、あるいは前期末の常用従業員数×100

 

で求めることが可能です。

 

離職率は、どのくらいの期間を設定するかによって大きく数字が異なりますが、離職要因の特定、原因追及、改善のために実際は、数年単位の短期間で測定されることが一般的とされています。

 

離職率を分析するうえで、最も重要とされているデータが新卒者の離職率です。 厚生労働省が2022年10月に発表した、2019年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況報告書によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が35.9%、新規大卒就職者が31.5%という結果でした。

 

人的コスト、時間的コスト、金銭的コストをかけ採用した人材が、3年以内に離職してしまうという現実は、各社の強化課題の1つであることは間違いないでしょう。

 

事業規模別でこの数字をみていくと、事業所規模が1,000人以上の新規学卒者の3年以内離職率は、高卒者、大卒者いずれも全体平均を下回っているのに対し、事業所規模が30~99人の新規学卒者の3年以内離職率は、高卒者、大卒者双方で平均を大きく上回ります。

 

~新規学卒者の3年以内離職率~

 

■事業所規模1,000人以上

・高卒者24.9%

・大卒者25.3%

 

■事業所規模30~99人

・高卒者43.4%

・大卒者39.4%

 

傾向として、事業規模が小さくなるほど離職率が高くなるということがわかります。 また、業界別でみていくと、離職率が高い業界は、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育・学習支援業が挙げられます。

新卒社員が離職する6つの主な原因

(※画像はイメージです/PIXTA)
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新卒者の3年以内離職率の原因を考えてみましょう。新卒者が離職してしまうのには、様々な理由があると考えられます。この理由を特定し、会社として組織改善をしていくことは、非常に重要なことです。今回は、6つの原因について解説してみます。

 

1.人間関係が悪い

2.ハラスメント

3.待遇が悪い

4.労働環境が整っていない

5.成長を実感できない

6.キャリアアップ・独立

 

1.人間関係が悪い

職場の人間関係が好ましくなかったということを理由に退職を決める人は、非常に多いのではないでしょうか。厳しい上司や先輩との関わりにストレスを感じ、仕事そのものが嫌になってしまうという理由は、典型的な原因ですが、人間関係の悪い職場に共通する特徴として、以下のような例が挙げられます。

 

・社員間の挨拶がない、もしくは少ない

・「協力して」、「手伝って」、「気づいたほうが」といったワードが多発している

・コミュニケーションツールがない、あってもルールがない

・悪口や噂話、陰口が多い

 

2.ハラスメント

ハラスメントの代表例として、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントがあります。 もちろん行為者自身に問題はありますが、ハラスメントが起きやすい職場環境になっていないかどうか、組織として考える必要があります。

 

3.待遇が悪い

「労働に対しての報酬が見合っていない」 「時間外労働が多い」 などを理由に退職を決意される方は、人間関係によるストレスからの退職と並ぶぐらい多い離職の理由ではないでしょうか。実際に受け取っている金額が少ないということもそうですが、評価制度がない、もしくは曖昧で、どのように評価され、どのように給与金額が決定されているのかわからないということでストレスを抱え、退職になるケースも多いと考えられます。

 

4.労働環境が整っていない

いわゆる大企業に比べて、中小零細企業は、人員が揃っていないのが現状。また、人件費を抑えるという観点から、1人が何役も担っているということは、当たり前のように起きているのではないでしょうか。なかには、中小零細企業は、「そんなものだ」と捉えている方もいらっしゃるかもしれません。

 

1人が何役も担っているわけですから、就業時間内で仕事が終わらない日も出てくるでしょう。また、突発的なタスクが設定され、タイムマネジメントもなかなかできないのではないでしょうか。

 

危険なのは、この状況が当たり前とされ、組織運営されていることです。1人何役も担っているわけですから、1つの業務においても中途半端になってしまい、できなくても当然という免責が発生します。

 

これでは、組織として成長しませんし、組織が成長しないということは、従業員へ還元される報酬も上がることはありません。結果的に疲弊し、未来永劫この環境下で働くのは危険と見切りをつけ退職の決断を下すことも少なくないでしょう。

 

5.成長を実感できない

ここでは、成長を「できなかったことができるようになる」と定義します。皆様は、入社してきたばかりの新卒社員に目標を設定できているでしょうか。 また、この目標を管理できているでしょうか。

 

目標がないということは、自分はどこに向かって動くべきかが不明確となり、迷いが生じます。また、目標との差分を自身の不足として埋めていくことで成長していきますが、目標がなければそもそも不足に気づくことができません。このような環境下では、自身が成長しているのかどうか不安になり、いまの環境を飛び出すという決断に繋がりやすいと考えられます。

 

また、成績優秀者に関しても注意が必要です。成長とは、「できなかったことができるようになる」と定義しましたが、常に目標を達成し続けている人は、できないことを認識する回数が少なくなります。したがって成長実感を味わう回数が少なくなるため、キャリアアップのために別の環境を選択するという決断に繋がります。

 

6.キャリアアップ・独立

ほかの退職原因と比較して、非常にポジティブな離職理由に思われるかもしれませんが、いまの環境下では得たいものが得られないから、このような決断をするということも考えられます。会社組織の制度が不十分である場合、今後のキャリアや報酬体系がイメージできないという理由から独立を考えることもあるでしょう。制度の見直しは定期的に行ってください。

 

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