「インボイス制度」は誰のため?…“税収増加”に憑りつかれた「財務省の執念」【森永卓郎が暴露】

「インボイス制度」は誰のため?…“税収増加”に憑りつかれた「財務省の執念」【森永卓郎が暴露】
(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍以降、欧州各国で減税措置がとられるなか、岸田総理は「消費税(率)を下げる考えはない」と明言しています。物価も上がり国民の家計が圧迫されるなか、日本政府が頑なに消費税率を引き下げないのはいったいなぜなのか。テレビやラジオなど多くのメディアで活躍する経済アナリストの森永卓郎氏が、日本の税金について「不都合な真実」を暴露します。

インボイス制度の導入は財務省の「執念」

インボイスは消費税の徴収漏れを防ぐための制度だが、そもそも日本ではほとんど徴収漏れはない。

 

それでも財務省がこだわるのは、脱税を防ぐことが目的ではないからだろう。私には免税業者いじめとしか考えられない。

 

消費税を導入した当時は、「零細企業はかわいそうだ、守ってあげよう」との気運があった。だからこそ、免税業者の制度を作った。

 

今は「この際、零細企業は整理したほうがいいんじゃないか」との空気になっている。ずいぶん前のことだが、私も法人を設立する前に、免税業者だった時代がある。そのときは、たとえば出版社から消費税が支払われても、その金額はすべて懐に入れることができた。

手続きの煩雑化で経済効率は落ちる

消費税の導入当初は、年間の売上が3,000万円以下であれば免税業者となることができて、消費税を納付する必要がなかった。それが途中で1,000万円以下に縮小された。免税業者の数は大幅に減ったにもかかわらず、インボイス制度でさらに排除しようとしているのだ。

 

そもそも消費税の申告の際には、仕入れの際にかかった消費税を差し引くことができる。たとえば、売上1億円の企業は消費税率10%で1,000万円の消費税を納付する必要がある。

 

しかし、仕入れの段階で500万円の消費税を支払っていれば、1,000万円-500万円で残りの500万円を納税すればいい。ところがインボイス制度の導入で、免税業者に支払った分の消費税は差し引くことができなくなる

 

つまり、企業は二重に消費税を支払うことになるので、免税業者からは仕入れをしにくくなる。結局、零細業者は排除される。それが嫌だったら免税業者の条件に当てはまっていても「課税業者になれ」というわけだ。

 

実際、個人タクシーの協同組合のなかには、すでにインボイス制度の導入に合わせて、課税業者を選択することを決めた会社も出てきている。

 

しかし、課税業者になると、大幅に手間が増える。帳簿を記帳しなければならないのはもちろんだが、ネットで取引したものはすべて、電子版の領収書を保管できるようにしなければならなくなっている。

 

たとえば、アマゾンや楽天市場で本を買った場合、これまでは領収書をプリントアウトして保管すればよかった。

 

それを電子版の領収書にして日付順にソートして保管せよとなっている。そんな手間をかけることで経済効率が落ちることを財務省はわかっていない。

 

私に言わせれば、領収書の提出に無駄な時間をかけさせるくらいなら、その分、本業で頑張ってもらい納税額を増やしたほうがよほどよい

 

次ページ財務省の行動基準は「歳出を1円でも少なくすること」

※本連載は、森永卓郎氏の著書『増税地獄 増負担時代を生き抜く経済学』(角川新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

増税地獄 増負担時代を生き抜く経済学

増税地獄 増負担時代を生き抜く経済学

森永 卓郎

KADOKAWA

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