災害時の「公助」はあまりあてにできない
「自助」とは、災害が発生したときに、まず自分自身の身の安全を守ることです。この中には家族も含まれます。
「共助」とは、地域やコミュニティといった周囲の人たちが協力して助け合うことをいいます。
そして、市町村や消防、県や警察、自衛隊といった公的機関による救助・援助が「公助」です。
成熟した現代社会で当然とされる様々な行政サービスが機能しなくなるのが大規模災害です。
私は、防災について学び、いろいろなところで防災の研修を担当してきましたが、その経験から行政による災害対応の仕組みと一般市民のイメージには乖離があることを感じます。いくつか例を示します。
避難所は住む家を失った人のためのもの
避難所を利用する避難者数は、基本的に家が全壊、全焼した人全員、家が半壊半焼した人の半分を基本に算定されています。過去の事例から、発災直後は、避難者の3分の1は被災地外へ疎開し、3分の2が避難所で過ごすとされています。
たとえば、横浜市戸塚区のケースで考えてみましょう。
戸塚区の人口は274,000人、最大級の被害が予想される「元禄型関東地震」での建物被害は約14,000棟、避難者は約41,000人が想定されています。
避難所(地域防災拠点)は35箇所が設置されていますが、アンケート回答のように、住民の半数137,000人が避難所に入ると、平均するとそれぞれの避難所に3,900人強の市民が避難をすることになります。これは現実的な状況とは考えられません。
避難所は家を失った人がメインの利用者です。建物が危険な状況でない限りは、マンションの住人は在宅避難で復旧に向けて協力していくことになります。
「被災」の基準は住宅の破損度
現状では、住宅の破損度が災害時の被災度の基準なので、まずは住居を失った人への住まいの提供が最優先となります。家が無事でも被災地エリアでは多かれ少なかれみんなが被災者ですが、支援の優先度は家を失った人から、となります。
破損度合いが相対的に少ない建物の住人の支援は、どうしても後回しになります。
避難所は住民の共助で運営
大規模地震の際の避難所の運用は自治体によって異なりますが、多くの自治体では避難所運営委員会などの組織をつくり、地域の自治会、町内会などが運営を担う仕組みとなっています。
つまり、共助の一環です。ところが、多くの市民の方は、これらを行政サービスだと思っているのではないでしょうか。
災害が起こったときは、とにかく避難所に行けば、職員が大変でしたね、と迎えてくれて、水と食料がもらえる、と思っていませんか?
災害直後の時期は、多くの市民は自助、共助で乗り越えて行かなくてはならない時期です。
次に、多くのマンションの実態と災害時に起こることについて考えてみましょう。図3-2 をご覧ください。