防災マニュアルの種類
災害が起こったとき、マンション全体でどのように助け合い、復旧に取り組んでいくのかを決め、文書化したものが「防災マニュアル」です。
マンション全体で一つの防災マニュアルを作ることも大切ですが、[図表1]に示すように、基本マニュアルをベースにして、住民用マニュアルや緊急時対応マニュアル等を必要に応じて作ることを推奨します。
◆基本マニュアル
理事や役員が読む全てを網羅したマニュアルです。建物、設備、資材に関する情報、平常時・非常時の体制、被災生活のルール、応急対応時のルールなど災害対応に必要なことを全てまとめておきます。
ページ数が多く変更も多いので、ページ差し替えが容易なように穴あけファイルなどの形で管理します。
◆住民用マニュアル
住民用には、普段やって欲しいこと(防災啓発)と発災直後の安否確認対応ルールを示した簡単なマニュアル(A3 2つ折り程度)を「年1度」など定期的に繰り返し配ることが望ましいです。文字を大きく、イラストも入れて読みやすいものを作りましょう。
◆緊急対応マニュアル(初動マニュアル)
発災直後は、混乱しますし役員が揃いません。緊急対応マニュアルには、慣れない人が見ても解るように、やるべきことを順番に、簡潔に記載します。分担しやすいようにカード式にする方法もあります。
◆規約改正または使用細則
2011年の東日本大震災を受けて、マンションの規約に、災害時の対応を盛り込むことが推奨されています。災害時には通常のスピード感では対応できないさまざまなことが起こり、理事や理事長は慣れない対応を迫られます。
規約改正のポイントは次項で説明します。
◆補足|「マンションDIG」のすすめ
地図を使って災害想定を考えることをDIG(Disaster Imagination Game)といいます。マンションDIGは、マンションの平面図、立面図を使って、災害時の避難経路や災害本部の場所、避難経路、防災本部の設置場所などを考えるワークショップです。このワークショップをやると、参加者の意見が出やすく、防災マニュアルを作るにあたって大変有効です。
防災マニュアル作成のポイント
次に防災マニュアルを作成する際のポイントをまとめてみました。
基本的には次のような点に留意しながら、必要に応じてマンションの特性も踏まえたうえで検討をするようにしてください。
◆防災マニュアルの役割
・非常時に居住者や管理組合が対応しやすいように、「⾏動指針・役割分担」をあらかじめ決めておく
・非常時にその場にいる誰かが対応するため、誰でもが対応でき、いつでも使える内容にする
◆マンションの事情に沿った独自性
・居住者数、⾮常⽤設備や管理組合の体制、マンションの⽴地や構造、⾏政の対応などが異なるため、⾃分たちの住むマンションの規模や構造などに合った、オリジナルの防災マニュアルを準備する。
◆実⽤性
・できるだけ⾒やすく、わかりやすい⽂章やレイアウトで作成する。
・チェックリストを作ると、避難命令が発令された場合の⾏動や、事前の備えを整理することや、⽣活の維持や再建にも役⽴つ。
・震災時に使⽤できる安否確認シートや簡易トイレなどの⼩物も付ける等、実⽤性も考えてみる。
◆マニュアルと防災訓練はセット
・防災マニュアルは、完成がゴールではない
・マニュアルに沿った⾏動を実際に試してみることが重要
・防災訓練などで実践と検証を繰り返しながら、より実践的なマニュアルにしていく