「建替え決議」の手続き
マンションが被災したときには、被災の程度の如何に関わらず建替えの検討を進めるケースがあります。
また、被災マンション法の復旧や売却の手続きは、建替えの手続きに準じた内容になっているので、ここでは建替え決議の仕組みとその後の建替えのすすめ方について簡単に解説をします。
さて、建替え決議の手続きを大雑把にまとめると[図表1]のようになります。
[図表1]の手続きにおいて、ポイントとなる点について説明します。
◆建替え決議を行うための総会の招集通知
建替え決議を行うための総会を招集するときは、議案として定めるべき事項と通知すべき事項があります。なお、建替え決議の総会の招集通知は2月以上前に発送することが必要です。
【議案として定めるべき事項】
ⅰ 再建建物の設計の概要
ⅱ 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
ⅲ ⅱの費用の分担に関する事項
ⅳ 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項(再建建物の住戸を誰が取得するか、その場合の費用の清算をどうするか)
【議案において通知すべき事項】
ⅰ 建替えをする理由
ⅱ 建替えをしなかったときに建物の効用の維持もしくは回復に要する費用の概算額とその内訳
ⅲ 長期修繕計画が定められているときはその概要
ⅳ 修繕積立金の額
◆説明会の開催
建替え決議の総会の1月以上前に、通知事項についての説明会を開催することが必要です。
◆決議要件
建替えは、総会で区分所有者の頭数と議決権のそれぞれ5分の4以上で決議されます。
◆決議に賛成しなかった区分所有者への「催告」
建替え決議に賛成しなかった区分所有者(反対した区分所有者以外に、棄権した区分所有者等も含みます)に対して、建替え決議を招集した者が、「決議された建替えに参加を促す通知」(以下、「催告」といいます)を送付します。
催告が届いてから2月以内に建替えに「参加する」と回答した区分所有者は、建替え決議に賛成した区分所有者とともに建替え参加者になります。一方で、期間内に建替えに参加する旨の回答をしなかった区分所有者は建替えに参加しないことが確定します。
◆売渡請求権の行使
建替えに参加する区分所有者もしくは建替え参加区分所有者全員が同意した買受指定者は、催告の期間後2月以内に売渡請求権を行使することができます。売渡請求権の行使の意思表示が相手方に届いた時点で売買契約が成立したものとみなされます。
建替え決議後の建替えの進め方
区分所有法には前述のように、建替え決議の手続きと決議に賛成をしなかった区分所有者に対する手続きしか規定されていません。では、建替え決議をしたあと、実際に建替えを実現するためにどのような手続きで進めればよいのでしょうか。
建替え決議では、設計計画の概要や資金計画の概要等も定められていますが、あくまで「概要」に過ぎません。そのため、実際に建替えをするための工事に着手するまでに、少なくとも次のようなことが必要となります。
ⅰ 設計計画の確定
ⅱ 再建後のマンションのどの部屋を誰が取得するかの確定
ⅲ 再建後のマンションを取得せずに転出する人物の確定
ⅳ 建築確認の取得及びその他の行政協議
ⅴ 建替えるための資金計画の確定(資金調達を含む)
ⅵ 各区分所有者の抱える課題への対応
ⅶ 建設会社との工事請負契約
ⅷ その他