被災区分を確認する意味
マンションが被災したときは、建物の被災状態によってその後の手続が変わるため、まずはその判断をすることが必要です。
以下で使われる言葉には法律用語も多いのでわかりにくい部分もありま すが、まずは[図表1]の「被災度合い」を示す4つの言葉と意味を覚えてください。
◆被災区分についての説明
[図表1]で建物の被災度合いについての区分をしましたが、厳密に言うと、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)には「軽微損傷」「小規模一部滅失」「大規模一部滅失」「全部滅失」という言葉は出てきません。
そもそも、区分所有法は区分所有建物の共用部分と敷地及び附属施設の管理や復旧及び建替え等について定めた法律ですから、全部滅失した建物は区分所有法の対象とはなりません。
ただし、被災マンション法において「建物の全部が滅失」したときの規定がされています。 次に、区分所有法第61条では、「建物の一部が滅失したときの復旧」について定めています。
この中で「建物の価格の2分の1以下に相当する部分が滅失」した場合について第1項~第4項で規定しており、第5項~第12項は「第1項本文の場合(建物の価格の2分の1以下に相当する部分の滅失)を除いて、建物が一部滅失した場合」について規定しています。
そのため、以下では前者を「小規模一部滅失」、後者を「大規模一部滅失」と表現します。なお、軽微損傷については、区分所有法においても何の言及もありませんが、建物が一部滅失した状況でないため、こうした用語を使わせていただきました。
◆「建物の価格」について
小規模一部滅失と大規模一部滅失の区分をするときに「建物の価格」をベースにして考えているのですが、この場合の「建物の価格」はどのように算定すればよいのでしょうか。
結論から申し上げると「被災する直前の建物の価格」で考えることになりますが、私たちがマンションを買うときは土地(持分)と建物(区分所有権)込みの価格で考えているので、「建物の価格」といわれても検討がつきません。
そのため、「小規模一部滅失」か「大規模一部滅失」かの判断が微妙なときは、不動産鑑定士に鑑定評価をしてもらった額を「建物の価格」と考えることになるでしょう。
なお、鑑定評価をする際には、復旧にかかる工事費なども参考数値として必要になると思われます。 そのほか、必要に応じて不動産問題に精通した弁護士や建築士等の意見も聴きながら、最終的には管理組合で判断をすることになります。
次に、大規模一部滅失と全部滅失も判断に苦しむことがあります。[写真1]と[写真2]をご覧ください。
[写真1]は写真の建物の左側部分は3階部分が一部つぶれていますが、右側はつぶれていません。そのため、このマンションは、「大規模一部滅失」と判断されています。