第2次世界大戦の末期、台湾本島と同じくらいの面積で、かつ海に囲まれている九州への上陸を計画した連合軍は、九州に展開可能な日本軍の兵力を最大で20万人と想定し、その奪取に必要な兵力を約76万人、空母約30隻、揚陸艦艇約900隻と見積もっている。約3.8倍の兵力が必要との見立てだ。
この作戦は、オリンピック作戦(OLYMPIC Operation)と呼ばれ、連合軍の日本本土上陸作戦(ダウンフォール作戦:DOWNFALL Operation)の一環として南九州に上陸し航空基地を確保する目的で計画され、九十九里浜 (千葉)と相模湾(神奈川)から関東平野に上陸して首都東京の占領を目指すコロネット作戦(CORONET Operation)と一体的に計画されたものである。
令和4(2022)年度版『防衛白書』によると、台湾の現有総兵力は約17万人(うち陸軍約10万人、海兵隊約1万人)である。このほか、有事には陸・海・空軍合わせて約166万人の予備役兵力を投入可能とみられている。
台湾国防部は、中国の軍事的圧力が増大しているのを受け、大勢の予備役を動員しているウクライナ軍を「今後の参考にする」として、2022年1月に予備役や官民の戦時動員にかかわる組織を統合した全民防衛動員署を新設し、有事の際の動員体制の効率化を図っている。
国防部は、2023年から新組織が主導して退役後8年以内の元軍人を毎年26万人招集して戦力化する計画である。したがって、最も可能性の高い中国軍による急速侵攻事態発生時における台湾の兵力は、現役と毎年収集の予備役を合わせた約43万人が初動対処兵力になるものと想定され、じ後予備役の招集が加速することに伴って兵力は飛躍的に増強されることになる。
攻撃側と防御側の兵力比は、オリンピック作戦で3.8倍、ノルマンディー上陸作戦で6.7倍、 沖縄戦で5.5倍であった。これらを考慮すると、中国軍による台湾侵攻には少なくとも台湾軍の3〜5倍程度の兵力、すなわち約130〜220万人(平均175万人)規模の兵力が必要になると見積もることが出来よう。