中国の海上民兵が「漁民を装い」任務遂行…。台日に“すでに訪れている脅威”【元・陸上自衛隊幹部学校長が解説】

中国の海上民兵が「漁民を装い」任務遂行…。台日に“すでに訪れている脅威”【元・陸上自衛隊幹部学校長が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

「台湾有事は日本有事」の危機が叫ばれる中、中国軍の本当の実力を解明することは喫緊の課題であり、中国の各種工作やマスコミなどの極端な論調に惑わされない冷静な判断が必要である、と元・陸上自衛隊幹部学校長、陸将の樋口譲次氏は言います。日本が直面する危機にどう備えるべきか──。本連載は、樋口譲次氏の著書『中国軍、その本当の実力は』(国書刊行会)から一部抜粋・編集してお届けします。

中国の対台湾「戦争に見えない戦争」はすでに始まっている

「三戦」と呼ばれる軍の政治工作

令和2年版『防衛白書』は、「中国は、軍事や戦争に関して、物理的手段のみならず、非物理的手段も重視しているとみられ、「三戦」と呼ばれる「輿論戦」、「心理戦」及び「法律戦」を軍の政治工作の項目としているほか、軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させるとの方針も掲げている」と記している。

 

その「三戦」について、米国防省は以下の通り定義している。

 

「輿論戦」は、中国の軍事行動に対する大衆及び国際社会の支持を得るとともに、敵が中国の利益に反するとみられる政策を追求することのないよう、国内及び国際世論に影響を及ぼすことを目的とし、

 

「心理戦」は、敵の軍人及びそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理作戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させようとし、

 

また、「法律戦」は、国際法および国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する予想される反発に対処するものである。

 

中国の「海上民兵」について

中国の武装力は、人民解放軍(中国軍)、人民武装警察部隊(武警)と民兵から構成されている。本来、海上法執行機関である「中国海警局」は2018年7月、武警隷下に「武警海警総隊」として移管され、中央軍事委員会による一元的な指導及び指揮を受ける武警のもとで運用されている。中国は、海洋侵出の野望を実現するため、海上民兵(リトル・ブルーメン)に海軍及び海警局の先兵的役割を担わせている。

 

海上民兵は、普段、漁業等に従事しているが、命令があれば、民間漁船等で編成された軍事組織(armedforces)に早変わりし、軍事活動であることを隠すため、漁民等に装って任務を遂行する。

 

東シナ海の尖閣諸島や南シナ海で見られるように、海上民兵は、中国の一方的な権利の主張に従い、情報収集や監視・傍受、相手の法執行機関や軍隊の牽制・妨害、諸施設・設備の破壊など様々な特殊作戦・ゲリラ活動を行いつつ、係争海域における中国のプレゼンス維持を目的とし、あるいは領有権を主張する島々に上陸して既成事実を作るなど幅広い活動を行い、中国の外交政策や軍事活動の支援任務に従事している。

 

その行動は、「サラミ1本全部を1度に盗るのではなく、気づかれないように少しずつスライスして盗る」という寓意に似ていることから、「サラミスライス戦術」と呼ばれている。

 

「サラミスライス戦術」を行う海上民兵が乗船する漁船等の周りを海警局の艦船が取り囲み、公船の後方に海軍の艦艇が控え、島や岩礁を2重3重に囲んでそれを奪取する作戦の様相が、中心を1枚ずつ包み込んでいるキャベツの葉に似ているので、これを「キャベツ戦術」と呼んでいる。

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中国軍、その本当の実力は

中国軍、その本当の実力は

樋口 譲次

国書刊行会

徹底した秘密主義と権謀術数を常套手段とする中国の政治・軍事の実情を知ることは、至難の業である。 「台湾有事は日本有事」の危機が叫ばれる中、中国軍の本当の実力を解明することは喫緊の課題であり、中国の各種工作やマス…

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