中国軍は「ソ連型の軍隊」
翻って、中国人民解放軍(中国軍)は、いうなれば「ソ連型の軍隊」である。ソ連軍(ロシア軍)と中国軍は共産主義革命軍としての共通項を持ち、その中で、中国人民解放軍(中国軍)はソ連の支援を受け、ソ連軍の組織、兵器・装備、戦い方、指揮統制、教育訓練、人事制度などに学びつつソ連軍をモデルに建設してきた歴史がある。
今日においても、中露は「包括的・戦略的協力パートナーシップ」を確立し、それを基盤として中国軍は、ロシアから戦闘機や駆逐艦、潜水艦など近代的な兵器・装備を購入し、定期的な軍高官などの往来に加え、共同訓練・演習など行い、ロシア製兵器の運用方法や実戦経験を有するロシア軍の作戦教義などの学習を通じて、いわゆる相互運用性(interoperability)を向上させている。
つまり、中国軍は、世界の中で、最もロシア軍と類似的特性を共有している軍隊の一つである、と言うことができる。
そこで、ウクライナ戦争におけるロシア軍の軍事作戦を中心に概観しその行動について分析評価すれば、ロシア軍と軍事的類似性を有する中国軍の実体や実力の一端を探り類推することが出来るのではないかと考えた。ウクライナのロシア軍は、曲がりなりにも中国軍の実情を投影している可能性があるとの見立てである。
台湾に対する着上陸作戦については、それを構成する基本要件として①侵攻正面における海上・航空優勢の獲得、②台湾領土への地上部隊の戦力投射、そして③主として大量輸送が可能な海上からの兵站(後方支援)の提供に加え、④作戦全般を通じた陸・海・空軍による一体的な統合作戦の遂行の四つが挙げられる。
中国軍が着上陸作戦を成功させるには、この四つの高いハードルをクリアーしなければならず、そこにメスを入れ、公開情報やデーターなどを基に分析評価すれば、中国軍の実体や実力のアウトラインの解明に近付くことが出来るのではないかと考えた。
また、そうすることによって、「台湾有事は日本有事」と言われる我が国の安全保障・防衛戦略の在り方を検討する上でも、大いに意義があるのではないだろうか。