(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今、全国各地で自然災害による被害が相次いでいます。マンションは戸建て住宅と構造が異なり、住民も多数生活しているので、特有の防災対策が必要となります。マンションの防災対策を考えるうえでの基本は何でしょうか。旭化成不動産レジデンスマンション建替え研究所副所長の大木祐悟氏とNPO法人かながわ311ネットワーク代表の伊藤朋子氏が著書『災害が来た! どうするマンション』(ロギカ書房)から解説します。

◆マンション内のコミュニティ活動について

以上で述べたような管理組合の特性から、厳密に考えると、区分所有者から部屋を借りて住んでいる人物はもとより、区分所有者の家族も管理組合の構成員ではありません。

 

一方で、マンションにおいては居住者間の交流(以下、居住者が交流するための活動を「コミュニティ活動」といいます)が重要であるという話もよく聞きますし、特にマンションの被災時における「共助」の観点に立つと、日ごろからのコミュニティ活動はとても重要であることが理解できます。

 

ただし、マンションの居住者には、部屋を借りて住んでいる人もいることを考えると、管理組合の活動とコミュニティ活動を混同してはいけないことに注意が必要です。

 

この関係を図式化すると、図1-5のようになります。

[図1-5]

 

つまり、区分所有者はマンション内に居住する区分所有者とマンション外に居住する区分所有者に分けることができますが、居住しているか否かにかかわらず管理組合は区分所有者で構成されますし、管理費や修繕積立金も区分所有者が支払っています。

 

一方でマンション内に居住して、居住者コミュニティを構成するのは、マンション内に居住する区分所有者のほか、居住区分所有者の同居親族や住戸を区分所有者から借りている人物となります。

 

このうち、区分所有者以外の人物は管理組合員でもありませんし、管理費や修繕積立金を支払っているわけでもありませんが、一方でマンションという共同生活の場に居住する者として、「建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う」(区分所有法46条2項)とされています。

 

また、難しいことは別にしても、「万が一のときにお互い助け合いましょう」ということについては、「所有者」だとか「借家人」だとかいう区別は意味がないこととなるでしょう。

 

なお、こうしたコミュニティ活動は、管理組合とは別に自治会等を立ち上げて行うことが良いのではないかと思います。

 

現実に、災害によりマンションが被災した直後には、このようなうるさいことをいう人は多くないとは思いますが、例えば管理組合が備蓄している水や非常食のようなものを配分する際に、「これは区分所有者の費用で購入したものだから、賃借人に配るのはおかしい」等の発言をする人が出てきてもおかしくありません。

 

一方で、生活弱者のサポートを考えるときは、区分所有者か賃借人か等について拘る意味がありません。

 

以上のようなことを考えると、日ごろから規約や細則整備を整備してルールを決めておくことに加えて、災害時の行動指針も作ったうえで管理組合の総会で決議をしておくべきでしょう。

 

 

大木祐悟

旭化成不動産 レジデンスマンション建替え研究所 副所長

 

伊藤朋子

NPO法人かながわ311ネットワーク 代表

 

災害が来た! どうするマンション

災害が来た! どうするマンション

大木 祐悟 伊藤 朋子

ロギカ書房

関東大震災から100年! 電気・ガス・水道、ゴミ・排泄物、病人、備蓄、情報・避難、防災組織、・防災マニュアル、建替え・・・。 マンション災害の特徴を知り、準備、そして被災から復興への道筋を検討する。 【内容】 …

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