BASE FOOD社をたった数年で急成長させた戦略
このように好奇心から始まったBASE FOOD社ですが、現在では、
・シリーズ累計販売食数が1,500万食を突破(2021年11月末時点)
・2019年5月にシリーズAラウンド※1で、総額約4億円を調達
・スマートキッチンサミット※2でファイナリストにノミネートされる
※1:シリーズAラウンド…企業が最初の重要なベンチャーキャピタル出資を受ける段階を指す
※2:スマートキッチンサミット…北米を代表するフードテックイベント
など数々の実績を残しており、いま注目のフードテックスタートアップ企業となっています。驚くべきは、これらは創業からたった数年間の出来事だという点です。なぜ、BASE FOOD社は数年でここまで成長できたのでしょうか? ここでは、その5つの理由を解説していきます。
1.「完全栄養食」という新市場の創造
いまでこそ「完全栄養食」といった触れ込みで販売される食品を目にする機会が増えてきましたが、BASE FOODが世に出るまでは、日本でそのような言葉が出ることはほとんどありませんでした。
従来では「全粒粉を使うことで低GI食品にする」や、「こんにゃくを使うことで糖質の量を減らす」といった志向のダイエット目的のパスタが多数販売されており、ヘルシーパスタ市場は飽和状態にありました。
しかし、BASE FOOD社はヘルシー食材を用いたヘルシーパスタ市場に参入するのではなく、栄養素に焦点を当て、1日に必要な栄養素をとれるパスタをつくることでライバルがいない「完全栄養食パスタ市場」という新たなマーケットを創造したのです。
これがBASE FOOD社がたった数年で大きな成長を遂げた1つ目の理由です。
2.商品を実際に試してもらう
BASE FOOD社は商品を広く普及するために、とにかく消費者の目に触れる場所に赴いて、実際に商品を試してもらう取り組みを行っています。これは、店舗を持っていないD2C(消費者直接取引)ブランドのBASE FOOD社にとっては非常に重要です。
たとえば、BASE FOOD社はブランド初期のうちから、健康系イベントや暗闇ボクササイズジム「B-monster」で商品を配るなど、ターゲットとなる健康への意識が高い消費者が集まる場所に行って、商品の無償配布を繰り返していました。
3.自社で店舗を持たずに商品を提供する場を創ることに成功
このような取り組みを続けていくうちにBASE FOOD社の商品は少しずつ人気となり、全国展開のカフェ「プロント」とのコラボ商品が実現しました。また、首都圏にあるファミリーマートとナチュラルローソン合計およそ1,450店舗にて、「ベースクッキー」を販売。さらにファミリーマートでは「ベースブレッド」の販売に成功しています。
このように自社で店舗を持たずとも商品を提供できる場所を創ることができたのは、地道な活動や取り組みが功を奏したからといえるでしょう。
4.継続的な商品の改善
BASE FOOD社初となる商品「ベースパスタ」は2017年2月に販売が開始されてから、およそ5年。2019年3月に「ベースブレッド」が発売されてからおよそ3年が経過しています。そしてどちらも繰り返し商品改善がされてきました。
その数は「ベースパスタ」が発売から4年で18回、「ベースブレッド」で発売から1年10ヵ月で13回にものぼります。改善に改善を重ねた「ベースパスタ」は、2021年2月時点ですでに6代目となっているのです。なぜ、BASE FOOD社はこれほどまでに迅速な商品改善を実現できるのでしょうか? その理由は下記の2つが挙げられます。
・最初から最後まで担当する開発体制
それでは1つずつ解説していきます。
■D2Cサブスクと最適化された在庫管理オペレーション
商品をバージョンアップすると、それまで販売していたバージョンの在庫を販売できなくなります。
卸販売がメインで流通在庫が多くある状態だと、旧バージョンの在庫が新バージョンと切り替わるタイミングでバラツキがでてしまったり、一斉に切り替えようとすると返品や廃棄が生じる点が問題です。
しかしBASE FOOD社はD2Cブランドであり、サブスクリプションビジネスを行っているため、こうした問題を回避できます。毎週の生産量を予測して在庫を数日分しか抱えずに済み、また、商品を切り替える際も廃棄が生じないオペレーションを組むことで、新しいバージョンに迅速に切り替えることができるのです。
■最初から最後まで担当する開発体制
BASE FOOD社の開発メンバーは4人いますが、新商品開発や改善プロジェクトを進める際は、プロセスごとに分業することなく1人の担当者が最初から最後まで担当します。つまり、
・工場での試作
・栄養成分や安全性の検査
・パッケージ表記確認
・発売前試食の実施発売後の改善ポイントの決定
といった一連の流れをすべて1人の担当者が行うのです。これにより、引き継ぎにかかる時間を短縮し、同時並行で複数のプロジェクトに取り組むことができます。さらに、改善する前提で商品を発売するため、一定の基準を満たした段階ですぐにバージョンアップできるのです。
5.ユーザーとの密なコミュニケーション
BASE FOOD社はユーザーと密なコミュニケーションをとることにリソースを割いています。たとえば、
・定期購入者にインタビューを行いニュースレターで紹介する
・お客様感謝イベントを開催する
といった取り組みを行うことで、BASE FOOD社に関わる人が「仲間」になるようなマーケティングを行っています。
また、独自のオウンドメディアの構築と運用にも注力しています。BASE FOODのユーザーはリテラシーが高い人が多く、企業からの一方的な広告メッセージでは刺さる人が少なく効果があまりありません。より自然に、ユーザーの役に立つ形で健康や課題についての問題を解消するためのオウンドメディアを構築することで、ユーザーとBASE FOOD社との接点をつくっています。
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