(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資家の中には、どうすれば節税できるかと考えている方も多いでしょう。一般的に不動産所得において必要経費になるものは、固定資産税や消費税などの租税公課のほか、減価償却費や修繕費、保険料、支払利息など限られています。そこで今回は、節税対策として知られている「経営セーフティ共済」と「小規模企業共済」について、宮路幸人税理士が解説します。

 

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経営セーフティ共済とは?

経営セーフティ共済とは、中小企業倒産防止共済制度とも言い、国が全額出資している独立行政法人により運営されている制度です。取引先の事業者が倒産して売掛金等の回収が困難になったようなときなどに、資金の借り入れをすぐに行えるようにするために設立されました。このとき借り入れられる額は、「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ない方の額になります。

 

経営セーフティ共済のメリットは、掛金の全額を損金または必要経費に算入できることです。掛金月額は、5,000円から200,000円までの範囲で自由に選ぶことができ、加入後の掛金の増額や減額も可能です。また、掛金の前納もできますので、利益が多い事業年度などであれば期末に1年分を前納し、その掛金を損金にすることも可能です。

 

ただし、加入条件として「1年以上事業を行っている中小企業者」が対象となるため、操業初年度の法人の場合は加入ができませんのでご注意ください(個人事業者が法人成りしたときは加入できます)。また、地方自治体によっては、本制度に加入した場合その掛金の一定額について、一定期間助成金を支給するケースもあります。詳しくは自治体にご確認ください。

 

一方、諸事情により共済契約が解約された場合は、解約手当金を受け取ることができます。自己都合の解約であっても、掛金を12ヵ月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40ヵ月以上納めていれば、掛金の全額が戻ります(12ヵ月未満の場合は掛捨てになります)。解約手当金を受け取った場合は、益金または収入として計上することとなります。

経営セーフティ共済は不動産賃貸業でも加入できる?

では、借主からの家賃収入を主とする不動産賃貸業の方は、そもそも取引先が存在せず、売掛金もないため加入は無理なのではないか?という疑問を持たれると思います。確かに中小機構のホームページにも、個人の場合は事業所得以外の収入(不動産所得等)は必要経費として認められないと記載されておりますので、不動産賃貸業のみの個人事業者は、この制度に加入することができません。しかし、法人化した場合は、加入可能となります。

経営セーフティ共済の節税効果はどのくらい?

経営セーフティ共済に加入し、限度額である月額20万円×12ヵ月=240万円を損金として計上した場合、中小企業の実効税率を33.56%とすると、240万円×33.56%=805,440円。節税額は約80万円と、かなり高い効果を得られます。資金面で余裕のある場合は、加入を検討してもよいでしょう。

小規模企業共済とは?

国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済は、中小企業の経営者や役員、個人事業主などのための退職金制度です。自分が将来受け取る退職金を自分自身で積み立てていく、というイメージでしょうか。現在、全国で約159万人(2022年3月現在)の方が加入されています。この掛金は所得税計算の際、掛金の全額を所得控除することができますので、高い節税効果を期待できます。

 

では、掛けたお金を受け取るときはどうなるのでしょうか。共済金は、退職・廃業時に受け取ることができます。共済金の受け取り方は「一括」、「分割」、「一括と分割の併用」の中から選ぶことができます。一括受取の場合は退職所得扱いになり、分割受取の場合は公的年金等の雑所得扱いとなるため、税制面でのメリットが大きくなります。また、加入者が亡くなったときに相続人が受け取れば、相続税の非課税枠(500万円×相続人の数)を適用できますので、非課税枠内であれば受け取った退職金に相続税はかかりません。

 

また、その他のメリットとしては、掛金を担保として低金利の貸付制度を利用できることです。低金利で、即日貸付も可能であるため便利です。

 

一方デメリットとしては、任意解約する場合、加入期間が20年未満だと掛金の100%分は戻ってこないことが挙げられます(廃業や役員の退任などの共済事由であれば100%以上戻ります)。また、任意解約で共済金を受け取る場合は、一時所得として課税されることとなります。他にも、小規模企業共済の掛金は月額変更で増額も減額もできますが、仮に減額した場合、減額分は運用されないため、将来共済金を受け取るときに元本割れを起こすリスクがあります。このため、将来掛金を減額しないで済むように掛金を設定するという点にも、注意が必要です。

小規模企業共済の節税効果はどのくらい?

小規模企業共済に加入した場合、節税額はどのくらいになるのでしょうか。限度額である月額7万円×12ヵ月=84万円を所得控除した場合の節税額を見ていきましょう。所得税は累進課税制度となっているため、節税額は加入者の所得状況に応じた金額になります。所得税率は5~45%、住民税率は一律10%ですので、所得税率+住民税率=合計15~55%となります。

 

出所:OWNERS.COM
【図表】課税される所得金額 出所:OWNERS.COM

 

課税所得が195万円未満の場合、節税額は84万円×15%=126,000円となり、課税所得が4,000万円以上の場合、節税額は84万円×55%=462,000円となります。

まとめ

今回は、経営セーフティ共済と小規模企業共済について簡単に解説しました。いずれの制度も、上手に活用すれば大きな節税メリットを得られることがわかりましたね。不動産投資をされている方は、小規模企業共済はもちろんのこと、法人で賃貸事業を行っているのであれば経営セーフティネットの加入も検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

宮路 幸人

多賀谷会計事務所 税理士、CFP

 

会計事務所における長い勤務経験・豊富な実務経験により、会計処理・税務処理及び経営や税務の相談など、様々な問題に対応。強みのある領域は不動産と相続関連。特に相続問題では、税金面だけでなく、家族が幸せになれるトータルな提案を重視している。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格も保有。常にフットワークを軽く、お客様のニーズに応えるのがモットー。離島支援活動も積極的に行っている。

 

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※本連載は、J Sync株式会社が運営する『OWNERS.COM』(https://cf-owners.com/)のコラムを転載したものです。

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