(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸経営をするにあたり、家賃の下落率が気になる方は多いのではないでしょうか。年数が経つと家賃相場は下がる傾向があるため、不動産投資では長期で収支計画を立てることが重要です。そこで本記事では、築年数ごとの家賃下落率の調査結果や、下落を抑える対策を紹介します。将来の家賃相場を踏まえた上で、安定した運用をしたい方はぜひ参考にしてください。

賃貸物件における築年数ごとの家賃下落率

一般的に、家賃の下落率は年率で平均1%といわれています。しかし実際には、築浅と築古の物件では下落率が異なります。

 

株式会社三井住友トラスト基礎研究所の調査『経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由』によると、以下の3つのフェーズで下落率に差がありました。

 

●第1フェーズ:築3~10年

●第2フェーズ:築11~20年

●第3フェーズ:築21~25年

 

築年数ごとの家賃下落率を、以下で見ていきましょう。

 

【平均】築0~25年の家賃下落率は年率1%

三井住友トラスト基礎研究所は、東京23区の賃貸マンションを対象に、572の事例から築年数による家賃下落率を分析しました。調査対象の年数は築0年から25年、物件タイプは単身者向けとコンパクトマンションです。

 

調査結果によると、築0~25年の下落率の平均は年率1%となっています。

 

【第1フェーズ】築3~10年の家賃下落率

●単身者向け:約1.7%

●コンパクトマンション:約2.2%

 

築3~10年は、下落率が一番大きい時期です。単身者向け・コンパクトマンションともに、25年間の平均である下落率1%を上回っています。

 

新築物件は家賃が高めに設定され、一度でも人が入居した後は賃料を下げざるを得ません。また築浅をアピールポイントにしている場合は、周りの新築物件と競合し、家賃は下落する傾向があります。

 

【第2フェーズ】築11~20年の家賃下落率

●単身者向け:約0.6%

●コンパクトマンション:約0.9%

 

築11~20年は第1フェーズより下落率が低くなり、平均の1%を下回っています。築10年以上になると「1年程度の経過では印象が変わらない」という入居者が多くなり、1年ごとの下落幅が小さくなると考えられています。

 

【第3フェーズ】築21~25年の家賃下落率

●単身者向け:約0.1%

●コンパクトマンション:約0.7%

 

築21~25年は、第2フェーズよりもさらに下落幅が少なくなります。特に単身者向けでは築21年以降の家賃がほぼ下がらず、下落率は約0.1%に留まる結果となりました。

賃貸物件の家賃下落率を想定する方法

前項では、築年数ごとの家賃の下落率を紹介しました。ここでは、購入物件の家賃下落率を想定する方法を解説します。

 

①築年数から想定する

家賃の下落率は、築年数をもとにすると想定しやすいでしょう。新築から25年間の下落率の平均は約1%です。長期でシミュレーションを作成する場合は、下落率1%で考えておくと、大きく外れる心配は少なくなるでしょう。

 

また、築3年から10年の間は下落率が大きくなります。三井住友トラスト基礎研究所の調査結果を参考に、約2%前後で想定しておくのが無難といえるかもしれません。

 

②地価を確認する

地価が高いエリアは、一般的に需要があるといえます。たとえば駅周辺や商業施設が多いエリアの他、高級住宅街などです。このようなエリアでは、賃貸物件の家賃も下がりづらい傾向があります。

 

投資物件のエリアの地価を調べ、下落率が平均よりも低いか否かを予想することもできるでしょう。国税庁や自治体が管理している路線価などで、地価を確認できます。

 

③地域人口を調べる

地域人口の推移から、家賃の下落率を想定することも方法の一つです。賃貸物件の家賃は需要によって変動するため、人口が減少している地域では家賃は下がる傾向にあるといえます。

 

たとえば総務省統計局の『人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)』では、都道府県別の人口増減率などが公表されています。このようなデータをもとに下落率を考えるのもよいでしょう。

築年数による家賃の下落率を抑える対策

築年数による家賃の下落率を抑えるには、既存入居者の満足度を上げたり、人気の設備を導入したりといった対策が考えられます。

 

①既存入居者の満足度を上げる

家賃の下落を抑える対策として、既存の入居者に長く住んでもらうことが挙げられます。

 

家賃は常に下がり続けているわけではなく、入居者が入れ替わるタイミングで下がるケースが多いためです。たとえば空室が埋まらない場合などに、家賃を下げざるを得ない状況が考えられます。

 

言い換えると、入居者に長く住んでもらうことにより、現状の家賃を維持しやすくなるのです。そのために既存入居者の満足度を上げることが大切です。

 

具体的には共用部を清潔に保つなど、適切な物件管理を行いましょう。また、トラブルを起こしやすい入居者には早めに対処することで、他の入居者の退去を防ぎやすくなります。

 

②人気のある設備を導入する

入居者が物件を選ぶ際には、設備の仕様が決め手となるケースもあります。全国賃貸住宅新聞の調査『ネット無料、安定の2冠【人気設備ランキング2022】』によると「特定の設備があれば、相場より家賃が高くても入居する」といった声もありました。

 

そのため、人気のある設備を導入することは、家賃の下落率を下げる有効な手段といえます。例として、人気の高い設備には以下のものが挙げられます。

 

・インターネット無料

・ホームセキュリティ

・防犯カメラ

・宅配ボックス

 

設備によっては大掛かりな工事が必要ですが、比較的簡単に設置できるものもあります。

 

築古物件の場合はリフォームで導入するのも、選択肢の一つです。また、これから物件を購入するなら、人気の設備のある物件を選ぶとよいでしょう。

まとめ

家賃の下落率は築年数で異なり、築3~10年は約2%前後と、下落幅が大きくなっています。しかし築11年以降は落ち着く傾向にあり、築25年までの平均では下落率1%となっています。

 

また、入居者に長く住んでもらうことや、人気の設備を導入するといった対策を施すことで、家賃の下落を抑えることは可能です。本記事で紹介したポイントを踏まえて家賃相場を想定し、安定的な運用を行いましょう。

 

 

執筆:悠木 まちゃ

ライター・編集者

宅建士・FP3級の資格保有。国立校の建築学科を卒業後、ハウスメーカーに勤務し、営業・設計職を担当。新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの設計などを手掛ける。

その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動。実務経験を活かし、不動産・金融系の分野を中心に記事執筆から編集まで行う。多数の企業メディアで編集を担当するほか、ライター向けオンラインサロンの添削講師としても活動している。

 

 

監修:中村 昌弘

Webライター・編集者

株式会社なかむら編集室 代表取締役

1985年生まれ埼玉県出身。立教大学を卒業後、マンションディベロッパーへ入社。その後は人事コンサル系の会社へ転職し、2016年2月に独立。独立と同時にWebライターをはじめる。SEOライティング × セールスライティング × 書籍編集 × サロン(Webライターラボ)運営など、幅広く活動中。

 

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