(※写真はイメージです/PIXTA)

手軽に作成可能な一方、「法定の要件を満たしていない」「関係者による遺言書の偽造の可能性」など、問題視されていた「自筆証書遺言書」。これらのリスクを減らす目的で制定されたのが「自筆証書遺言書の保管制度」です。一体どのような制度なのでしょうか? 相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士がわかりやすく解説します。

【保管申請時】遺言者側が制度を利用する流れ

(※写真はイメージです/PIXTA)
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保管制度を利用する際、遺言者側が行う手続きの流れは、次のとおりです※1

 

※1 法務省:遺言者の手続

 

①自筆証書遺言を作成する

はじめに、要件に沿った自筆証書遺言書を作成します。自筆証書遺言書の法律上の要件(968条)は、次のとおりです。

 

1. 遺言者が全文を自書すること(別紙で財産目録を添付する場合には、財産目録は自書不要。ただし財産目録はすべてのページに署名捺印が必要)

2. 遺言者が日付と氏名を自書すること

3. 遺言者が押印すること

 

ただし、法務局での保管制度を利用する際には、この通常の要件に加えて次の要件も満たさなければなりません※2

 

※2 法務省:遺言書の様式等についての注意事項

 

1. 次の用紙で作成すること

・サイズ:A4サイズ

・模様等:記載した文字が読みづらくなるような模様や彩色がないもの

・余白:最低限次の余白を確保すること。上部5ミリメートル、下部10ミリメートル、左20ミリメートル、右5ミリメートル(一文字でもはみ出していれば保管不可)

 

2. 用紙の片面のみに記載すること

 

3. 各ページに、総ページ数とページ番号を記載すること(「1/2」「2/2」など)

 

4. 複数ページにわたる場合でもホチキスなどで綴じないこと

 

5. 消えるインクなどは使用せず、ボールペンや万年筆などの消えにくい筆記具を使用すること

 

6. 遺言者の氏名は戸籍どおり(外国籍の方は公的書類記載のとおり)に記載すること。ペンネームはいくら周知のものであっても不可

 

これらの要件を満たしていなければ保管を受け付けてもらえないため注意が必要です。また、法務局では、遺言書の作成指導や内容についてのアドバイスなどを受けることはできません。これらが必要な場合には、あらかじめ弁護士などの専門家へご相談ください。

 

②保管申請先の法務局を決める

遺言書の作成ができたら、遺言書を保管してもらう法務局(遺言書保管所)を決めます。保管先とすることのできる法務局は、次のいずれかです。

 

1. 遺言者の住所地を管轄する

2. 遺言書保管所遺言者の本籍地を管轄する

3. 遺言書保管所遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

 

法務局の管轄は、法務省のホームページから確認できます。

 

③保管申請書を作成する

保管申請をする際には、遺言書とともに保管申請書を提出しなければなりません。保管申請書の様式は法務省のホームページか最寄りの法務局で入手できます。記載欄が多いうえ正確な表記が必要となるため、保管申請時に窓口で書くのではなく、あらかじめ作成しておきましょう。

 

④保管申請に出向く

遺言書と保管申請書の準備ができたら、遺言者本人が保管申請に出向きます。保管申請は予約制となっていますので、必ず予約をしてから出向くようにしましょう。また、本人以外が代理で出向くことはできません。保管申請に必要な書類は、原則として次のとおりです。すべて忘れずに持っていきましょう。

 

・遺言書:上で紹介した要件に沿って作成します

・保管申請書:あらかじめ作成して持参します

・3ヵ月以内に取得した住民票の写し(本籍と筆頭者の記載があり、マイナンバーや住民票コードの記載のないもの)

・顔写真付きの身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)

 

このほかに、保管申請する遺言書1通あたり、3,900円の手数料が必要です。手数料は収入印紙で納めますが、収入印紙は法務局で購入することができます。

 

保管申請が受け付けられると、遺言者の氏名や遺言書保管番号などが記載された「保管証」が発行されるので、大切に保管しましょう。

 

なお、必要書類のなかに、不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)や預貯金通帳など財産についての書類や、遺産をわたす相手の住民票などはありません。つまり、これらの誤記は法務局が関与するところではなく、仮に書き損じており手続きができなかったとしても自己責任であるということです。

 

法務局での遺言書保管制度を使ったことは遺言書に問題がないというお墨付きではありませんので、誤解のないようご注意ください。

 

次ページ【相続人側の手続き】相続発生後の流れ

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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