(※画像はイメージです/PIXTA)

消費税の「インボイス制度」の施行が2023年10月1日に迫っていますが、施行により電気代が値上がりすることになりそうです。一見関係なさそうですが、なぜでしょうか。問題点とともに解説します。

電気代の値上げは「総額58億円」

では、電気代はインボイス制度施行の影響でいくら値上げされるのでしょうか。

 

2月17日の衆議院財務金融委員会における資源エネルギー庁長官の答弁によると、「仕入税額控除できないことにより『やむをえず』発生する負担」の額は以下の通り、総額58億円です(議事録参照)。

 

・10kW/h未満の太陽光発電設備:15億円

・10kW/h以上の太陽光発電設備:39億円

・その他の再生エネルギー:4億円

 

そして、これを基に試算すると、「1kW/hあたり0.007円」の値上げになるとのことです。

 

ただし、この試算はあくまでも「機械的に行ったもの」だといいます。

 

東京商工リサーチによると、2023年4月時点でのインボイス登録は、法人が90%を超えているのに対し、個人事業主はまだ42.3%と半分にも達しておらず、進捗がはかばかしくない現状がうかがわれます。そのことからすれば、いざインボイス制度が施行されると、この金額はさらに大きくなる可能性があります。

他の事業者との間で公平性を欠く疑い

また、他の事業者との間の公平を欠くのではないかという問題点も指摘されています。

 

インボイス制度が施行された場合、免税事業者との取引において従来通りの「仕入税額控除」ができなくなり、損失が発生するのは、大手電力会社だけではありません。

 

しかるに、大手電力会社に対してだけ、電気料金への転嫁という形で損失の補てんを行うのは、公平性を欠くとの指摘がなされているのです。

経済産業省・資源エネルギー庁の回答は?

これらの問題点は、いずれも、2023年2月9日~3月10日に行われた意見公募手続(パブリックコメント)において、多数の人から提起されたものです。

 

これに対し、経済産業省・資源エネルギー庁からは、以下の回答が行われています(意見公募手続結果参照)。

 

【経済産業省・資源エネルギー庁の回答】

「法律に基づく再エネ電気の買取業務を行う中で、仕入税額控除ができないことにより、やむを得ず生じる、買取に要する追加的な費用については、法律に基づく再エネ電気の買取業務の継続が困難とならないよう、資源エネルギー庁審議会における公開の議論を経て、2023年度についてはFIT制度において対応することが取りまとめられました。今般の改正内容は、こうした審議会における取りまとめを尊重したものとなります。」

 

「引き続き、課税事業者のインボイス登録に関する周知等を通じて、インボイス制度の導入に伴う買取に要する費用への影響の抑制に取り組むとともに、2024年度以降の負担のあり方については、審議会での議論を通じて丁寧に検討してまいります。」

 

この文面を読む限り、2023年度についてはいったんFIT制度の枠内で対応するものの、2024年度以降については今後検討するとも解釈できます。寄せられた多数の意見に対する一定の配慮がみてとれます。

 

しかし、このままインボイス制度が施行されれば、結局は、それにより電力会社に発生する損失を誰がどのようにして負担するのかという問題は避けて通れません。

 

インボイス制度については、従来の免税事業者に著しい不利益が生じることや、課税事業者の側でも新たな事務負担が生じることなど、様々な問題点が指摘されています。

 

国会・政府には、インボイス制度の問題点を正面から受け止め、制度自体の見直しも含め、現実的かつ柔軟な対応を行うことが求められます。

 

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