日本の自動車関連税制の問題点
◆日本の自動車税制の全体像
まず、日本の自動車税制は、「車両購入・新規登録時」、「保有期間中」、「車検時」に分けて、以下のようになっています。
【車両購入・新規登録時】
・自動車税・軽自動車税(環境性能割)
・自動車重量税
・消費税
【保有期間中】
・自動車税・軽自動車税(種別割)
・ガソリン税・消費税
【車検時】
・自動車重量税
以上を前提に、古くから指摘されている諸問題を、歴史的経緯も含め、できるだけわかりやすく整理して解説します。
◆自動車重量税・ガソリン税の4つの問題点
まず、自動車重量税・ガソリン税の問題点です。以下の4点が指摘されています。
【自動車重量税・ガソリン税の問題点】
1. 「一般財源化」(2009年)により存在意義が失われている
2.「一般財源化」の後も高い税率が法的根拠なく引き継がれている
3. 自動車重量税は新規登録から13年経過すると税率が上がる
4. ガソリン税については消費税との「二重課税」の問題がある
第一に、自動車重量税とガソリン税は、「一般財源化」(2009年)によりその存在意義自体が失われているという指摘があります。
どういうことかというと、自動車重量税とガソリン税はかつて、「道路特定財源」という扱いがされていました。
道路特定財源とは、使い道が道路の整備・維持管理のみに限られるものをさします。なぜそうなっていたかというと、道路を利用するドライバーに、道路の整備・維持管理のコストを負担させることが公平と考えられたためです。
道路特定財源が設定されたのは1953年です。当時は、自動車を所有する人自体が少なく、自動車は「ぜいたく品」とみられていました。
しかし、その後、道路の整備は著しく進み、かつ、自動車は一般庶民にも広く普及し、税収が増えました。その結果、「道路特定財源」は、税収が歳出を大幅に上回るようになったのです。
本来、その時点で道路特定財源は歴史的役割を終えたと考え、自動車重量税・ガソリン税については、廃止も含めて抜本的見直しが行われるべきでした。しかし、それがなされることはありませんでした。
その後、いわゆる「構造改革」の流れのなかで、道路特定財源を使途が限定されない「一般財源」に移行されました。2009年のことでした。
この主な経緯については、2005年(平成17年)12月9日に政府・与党がまとめた「道路特定財源の見直しに関する基本方針」(国土交通省HP参照)に記載されています。
また、その間、もっぱらスポットが当てられたのは「道路特定財源が道路族議員の既得権となっている」という点でした。道路特定財源(自動車重量税・ガソリン税)の存在意義の問題はなぜかあまり俎上に上がりませんでした。
第二に、自動車重量税・ガソリン税については、「一般財源化」の後も高い税率が法的根拠なく引き継がれているという問題が指摘されています。
どういうことかというと、現行の税率は、道路特定財源だった当時、道路整備の財源が足りないという理由で暫定的に引き上げられたまま、ずっと続いているものです。
前述したように、その後、道路特定財源は税収が歳出を大幅に上回ることになりました。本来ならば、その時点で税率は引き下げられるべきでした。ところが、税率はそのまま継続されてきました。
しかも、「一般財源化」の後もそのまま引き継がれています。その経緯から「当分の間税率」と呼ばれ、批判されています。
なお、税率が維持されている理由について、前述の「道路特定財源の見直しに関する基本方針」においては「厳しい財政事情」「環境面への影響の配慮」等の理由が示されています。
第三に、自動車重量税については、新規登録から13年経過すると税率が上がるという点が不合理であると指摘されています。
これについては、年式が新しい自動車ほど環境に優しいという理由が付けられています。しかし、新しい自動車を短期間で乗り換えることと、同じ自動車を大事に長く乗り続けることと、どちらが環境に負荷を与えるのかを考えると、合理性に疑問があるといわざるを得ません。
第四に、ガソリン税について「二重課税」の問題が指摘されています。
すなわち、現状、ガソリン税はガソリン価格の一部に含まれ、さらにそのうえに消費税相当額を乗せて販売されるしくみになっています。
これは、税金にさらに税金が課される「二重課税」にほかなりません。