(写真はイメージです/PIXTA)

機関投資家の間で、不動産投資を減速させる動きがあるといいます。外国資本による最新・不動産投資動向について、ニッセイ基礎研究所の渡邊布味子氏が解説します。

超富裕層の戦略的資産配分において不動産への投資需要は強い

「超富裕層が資産をどう配分するか」については、超富裕層の資産管理会社であるファミリーオフィスの投資意向が参考になるだろう。米国の調査会社のフィントレックスによると、不動産に投資意向があるファミリーオフィスの割合は、運用資産額の規模別で50億ドル以上が73.2%と最も多く、資産規模5,000万ドルから1億ドルが63.2%と最も少なく、不動産への投資意向は運用資産の規模が大きいほど強い。またいずれの資産規模でも、ベンチャーキャピタルや、ファンド・オブ・ファンズよりも不動産への投資意向が強い(図表4)

 

【図表4】
【図表4】

 

ファミリーオフィスは、超富裕層一族の資産を保全し、継承することを目的とするため、ハイリスク・ハイリターンな証券系の投資戦略よりも、長期安定的な投資戦略をとる。なかでも不動産は長期に安定した利益を稼ぐ現物資産として期待されていると考える。つまり、多くの超富裕層がとる投資戦略は、これまで機関投資家が不動産に対してとってきた投資戦略と同じであると推定される。資金力や迅速な意思決定プロセスを背景に、機関投資家などよりも相対的に高い価格水準で投資を決定する場面が多くなるのではないだろうか。

 

ただし、例え資金が潤沢であったとしても、購入実績のない外国資本の投資家が優良な不動産の取引に直接参入できる可能性は低い。国内で不動産購入実績のある資産管理会社等が組成したファンドを経由した不動産投資を行うこととなるだろう。米国では、投資会社であるブラックストーンやKKR(コルバーグ・クラビス・ロバーツ)、投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントなどが、既に超富裕層からある程度の資金を調達しているようだ。

 

今後は、先進国不動産市場を中心に超富裕層の資産を資金源とした外国資本による不動産の取得傾向が強まる可能性がある。特に、世界有数の規模である日本の不動産市場*3は、他の先進国と比較して不動産の価格が相対的に低水準であることもあり、機関投資家を含めた外国資本の投資意欲は強い。今後は、さらに超富裕層の資本も加わり、外国資本による国内不動産への投資が拡大していくのではないだろうか。

 

*3:渡邊布味子『増える外国資本、長期投資の定着で優良不動産の取得はより困難に』(ニッセイ基礎研究所、年金ストラテジー、2022年04月05日)

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年4月14日に公開したレポートを転載したものです。

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