科学的管理法の5つのポイント
科学的管理法は大きくわけると5つで成り立っています。
2.作業研究
3.指図票制度
4.新しい賃金制度
5.新しい組織
これらを1つひとつみていきます。
1. 課業管理
まず課業管理についてですが、これはいくつかの原理にわかれています。
■課業設定の原理
「課業設定の原理」という難しい言葉ですが、これは「1人当たりどれくらいの作業量にすると効率よく働けるか」という分析と設定を指しています。マネジメントをするときにはあまり無茶をいって仕事量を増やしても効果が上がらないということです。
テイラーは先ほどのシュミットを実験台にし、どれくらい仕事量を与えれば成果が出るのかということを分析しました。あまり仕事量を増やしすぎても早く疲れてしまい、返って生産性が落ちるということがわかりましたので、作業量が多ければ多いほどいいという訳ではなく、適切な仕事量を与えてあげることが課業設定の原理というものです。
■標準的条件の原理
そして「標準的条件の原理」というもの。これは、”決められた仕事量をこなすのに1番いい作業のやり方はなんなのか”。たとえば、どういう道具を使えばいいのか。どういう動作をすればいいのか。ということを決めることになります。
■達成賃率・未達成賃率
そして達成賃率・未達成賃率。 これは、「この作業をこれ以上頑張ってくれたらこれくらい賃料が上がります。これ以下だとこれくらいの賃率になります。」という報酬の定義をしっかり決めることです。雇う側にとても合理的だし、働く側にとっても合理的な率に設定するということです。
■熟練移転の原理
次に、熟練移転の原理。 これはまさにシュミットの話で、シュミットはテイラーが決めた作業によって成果を出しました。 その熟練されたやり方をほかの作業員に移転させるというのが熟練移転の原理です。よく、売れている営業マンのやり方をマネさせて、チーム全体の営業成果を高めるということをやりますが、それがまさに熟練移転の原理ですね。これを100年くらい前からやっているということです。
2. 作業研究
次に、作業研究。「課業管理でどれくらいの仕事にすればいいか。どういう動作、道具を使えばいいか」ということを分析しないといけないですがそれが「作業研究」によってなされます。
■時間研究
まずは、時間研究。各作業にどれくらい時間がかかるかということです。たとえば、鉄をすくいあげるのにどれくらい時間がかかるか。それを運ぶのにどれくらい時間がかかるか。それをストップウォッチで測り、各作業を分析しました。
■動作研究
そして動作研究。 これは「ムリムダのない動作とはどういうものか」を分析するということです。時間と動作の研究によって適切な成果が出るやり方を見つけてそれを標準的なやり方として決める。その作業のやり方をほかの作業員にもやらせるというのが基本的な考え方です。さすがにいまの時代に社員の作業時間を図ったりすると、またそれはそれで問題があるという話になるかと思いますが、当時はやっていたんですね。
3. 指図票
次に指図票です。これは作業マニュアルです。うまくいくやり方を決めた時にはそれを他の人に移転させなくてはならないので、移転させるために「こういう風にやりなさい」という指図が必要です。それを紙にしたものが指図票ですね。いまでいうマニュアルです。 指図票には3つのことが書いてありました。
・どんな道具を使うか?
1つは道具。どういう道具を使えば一番生産性が高まるのかということ。昔は鉄を運ぶのにも人それぞれスコップの大きさが違ったようでした。だが、それを誰も気にせず自分がやりたいやり方でやっていた。それだとパフォーマンスが一定にならないため、道具を決めました。
・どれくらい時間を使うか?
次に、時間の標準化。時間も、チームリーダーの指示で休んだり働いたりしていました。そうではなくて「これくらい働いたらこれくらい休む」という時間を標準化しました。
・どう作業するか?
そして作業の標準化。どういう動作でやれば効率が上がるかというのを標準化しました。 そしてこの3つをまとめて、そのとおりにやらせる。それで生産性を高めようというやり方です。
4.賃金制度
4つ目の新しい賃金制度というのは先ほどいった通りです。これくらいのハードルを越えたらこれくらいの賃率にする。それより下がったらこれくらいの率にする。という基準を決めて、それより上がったら高い賃率で払う。それより低かったら低い賃率で払うという仕組みです。作業員から見て平等感が得られるように制度を作るということになります。
5.新しい組織
そして最後。新しい組織。これはテイラーのなかでは特徴的な考え方でした。先ほどいった通り、昔は、チームがあって、各チームのリーダーの匙加減でメンバーが働くというやり方でした。
なので、雇い主からすると、雇っている方のやり方でやってほしいものの、実際は現場のリーダーが力と権限を持っていて彼らのやりたいようにしかできなかった。そこで、働く側と雇う側の対立が起こっていました。
そこでテイラーは計画部というものを作り「どういう道具を使うか」「どれくらい時間を使うか」計画するということを決めました。リーダーは計画部が決めたとおりにメンバーに指示を出して働かせるということで全体の統一感を出すやり方にしました。
いまでいう、ライン部門とスタッフ部門を分けたという形です。こうすることで全体を底上げしました。
計画部という所はいまの会社でいう、「管理署」という形ですね。チェーン店であれば計画部は「本部」。各店舗は本部の決めたやり方でやっていく。これが新しい組織ということですね。ライン部門とスタッフ部門をよく分けますが、この原点はテイラーの新しい組織の考え方だといわれています。
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