「就職氷河期世代」の苦悩
1970年~1984年頃に生まれた方々は、俗に「就職氷河期世代」と呼ばれます。バブルが崩壊した1991年前後からの約10年間、不景気で雇用枠が大幅に減らされるなかで、就職活動に苦戦を強いられた世代です。「数十社に応募しても、どこの会社にも採用してもらえない」という方が大勢いました。そんな就職氷河期世代は現在、40代~50代前半になっています。
46歳のAさんも、就職氷河期世代の1人。非正規雇用で働く独身男性です。大学を卒業して以来、非正規雇用や雇用期間の定めのない社員として数社を転々とし、数年前からはある派遣会社の契約社員として働いています。
毎月の手取り収入は17万円、額面の年収は258万円※1です。家賃月7万円のアパートに1人で暮らしており、貯蓄をする余裕はありません。
※1 厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」によると、45~49歳男性の正社員・正職員の賃金は395.9万円、正社員・正職員以外の賃金は240.0万円。雇用形態間の賃金格差は、正社員・正職員を100とすると正社員・正職員以外は60.6となっている。
ボーナスはいままで1度ももらったことがありませんが、どの会社でも厚生年金には加入しており、厚生年金や健康保険といった社会保険料が給与から天引きされていました。
Aさんはある日、このままの給与で65歳まで働いたとき、老齢厚生年金がいくらもらえるか気になり、日本年金機構の「ねんきんネット※2」で試算してみました。すると、結果は168万円と書いてあります。
※2 <参照>日本年金機構HP「ねんきんネット」
現在の年収258万円でも余裕がないにもかかわらず、年金受給額は168万円と90万円も差があります。月にして7万5,000円の差額を、老後までにどのように準備したらいいのでしょう。Aさんは途方に暮れ、思わずアパートでひとり「僕の人生に救いはないの?」と嘆いてしまいました。
そんなAさんから相談を受けた知人は、Aさんの現状や将来を見るに見かねて、FPである筆者のところにAさんを連れてきたのでした。
“生涯1人って考えると、やっぱり老後が心配です”
Aさんの第一印象は、「寡黙な人」。Aさんはぼそぼそと、将来への不安を話し始めました。
「給与が少ないと人は言うけど、決してやせ我慢ではなく、いまはこの給与でできる生活が身についているし、そこにはあまり不満はありません。ただ、非正規雇用は勤め先の都合で雇用が突然切られることがあり、また突然「クビ」と言われたらと考えると、寝られなくなることがあります」。
「でも、」とAさんは続けます。「いまの立場だと、残業もないし責任も軽く、時間も結構自由に使えます。20年くらいのあいだにいろんな職場で働いたので、自分で言ってはなんだけど、見よう見まねでいろんな技能も身についたと思っています」。
少し考えた末、Aさんは言いました。「いまはいいけど、生涯1人って考えるとやっぱり老後が心配です。だから、もっと収入のいいところで働き、生活を安定させたいです」。
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