かつては「適度な湿度」を保っていた日本の家屋
前回の続きです。エアコンによるドライや加湿器のない時代、どうやって湿度を40%から70%にコントロールしていたのでしょう。気象庁のデータが示すように、冬場も十分な湿度があったと考えれば、まさに「家の作りやうは、夏をむねとすべし」です。
湿気が抜けるよう風通しを良くするための間取り、簾戸に着替える夏支度、さらに土壁や障子紙や襖、ムクの木による調湿作用が影でバックアップしてくれる住まいだったのです。冬場も寒ければ囲炉裏で暖をとり、お湯を沸かすことで体感温度も和らげていたのでしょう。
それが1960年代後半の大量供給時代に「家の作りやう」は大きく変化します。自然素材から新建材に取って代わられ、土間や土壁の存在が消えた建物の室内は調湿性も熱容量の効果も薄められました。
便利になるはずの「大量供給」の時代だったが・・・
「調湿性も熱容量もない」室内空間は、ビニールハウスを想起させます。住宅はこの方向へ向かっていきます。
これは、湿度・温度がともに急変しやすく、結露を発生しやすい室内環境なのです。加えて工業製品のアルミサッシが普及することで、窓の気密性が増し、湿気の逃げ場がなくなり、やはり結露の発生を誘引することになりました。
湿度を嫌い、それを対処する住文化をもっていたはずの日本の住まいは、便利になるはずの大量供給の時代を経て、外部環境は乾燥化しているにもかかわらず、結露に悩まされることとなるのです。なんという矛盾でしょうか。