(※写真はイメージです/PIXTA)

遺言書は、自分の死後における財産の行き先などを決めておくための非常に重要な文書です。では、遺言書はどのように作成すればよいのでしょうか? 本記事では、遺言書の基本を、例文とともに書き方や書く際の注意点について、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

「遺言書」とは?

遺言書とは、遺言者である本人が亡くなったあとにおける遺産の配分などを、生前に決めておく文書のことです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
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遺言書がない場合、ある人が亡くなったあとで遺産を配分するためには、相続人全員の話し合いである「遺産分割協議」を行い、相続人全員が合意のもとで話し合いを成立させる必要があります。

 

仮に1人でも分割内容に納得しない人がいれば、遺産分割協議書を成立させることができず、最終的には家庭裁判所で遺産分割協議を行う「調停」や、裁判所がわけ方を決める「審判」を行って解決しなければならなくなる場合もあります。これが、いわゆる相続争いです。

 

一方、適切な遺言書があれば遺言書どおりに遺産を配分すればよく、遺産分割協議が不要となります。

遺言書に書いて「法的効力」が生じるもの

遺言書に書いて法的効力を生じる事項は、法律で規定されています。

 

たとえば、「私が亡くなったらOO会館で葬儀をしてほしい」という記載や、「私の死後、妻のO子は再婚しないように」という記載などには、遺言者の意向を遺族に伝える程度の意味はあるものの、法的な効力がありません。遺言書でできる主なことは、次のとおりです。

 

遺産の配分

遺言書の効力のうち、メインとなるものが遺産の配分です。遺産に含まれる財産をそれぞれ誰に相続(遺贈)させたいのかを記すことで、亡くなったあとの名義変更などの手続きがスムーズとなります。

 

遺言で財産を渡す相手には、特に制限はありません。相続人である子や配偶者などに財産を渡すことができるのはもちろんのこと、お世話になった友人など、親族ではない人に財産を渡すことも可能です。

 

相続権の剥奪

遺言書には、特定の相続人の相続権を剥奪する内容を記載することが可能です(民法893条)。これを、「相続人の廃除」といいます。

 

ただし、相続人の廃除は、遺言書に書いたからといって必ずしも認められるわけではありません。相続人から廃除するためには、次のいずれかの要件を満たしたうえで、排除が相当と家庭裁判所が認めることが必要です。

 

・被相続人(遺言者)を虐待したこと

・被相続人(遺言者)に重大な侮辱を加えたこと

・推定相続人(廃除対象者)にその他の著しい非行があったこと

 

このように、廃除のハードルは決して低くありません。たとえば、会うたびに口論になるなど単に相性が悪いという場合や、前妻の子には財産を渡したくないといった理由による場合などには、廃除が認められる可能性は低いでしょう。

 

そのため、相続人からの廃除について詳しく知りたい方は、あらかじめ弁護士へご相談ください。また、廃除の方法として、遺言書に記載する以外にも、生前に家庭裁判所に請求することも可能ですので、あわせてご相談ください。

 

子供の認知

認知とは、父親が、ある人が自分の子供であると法的に認める行為です。認知をして法的に父子関係が成立することで、認知をした子に相続権を発生させる効果があります。

 

認知は生前に行うこともできますが、事情により生前に行うことが難しい場合には、遺言書で認知をすることも可能です。ただし、この場合には認知の手続きが必ず行われるよう、後述する遺言執行者を弁護士へ依頼しておくことをおすすめします。

 

遺言執行者の指定

遺言執行者とは、遺言書を遺言書どおりに実現させる人です。遺言執行者は遺言書内であらかじめ指定しておくことが可能です。遺言執行者には遺言書で財産を渡す親族などを指定することもできますし、弁護士などの専門家を指定することも可能です。争いが予見される場合や複雑な手続きを伴う場合には、弁護士を遺言執行者として指定しておくとよいでしょう。

 

生命保険金の受取人変更

遺言書に記載することで、生命保険金の受取人を変更することが可能です。ただし、遺言書への記載で受取人が変更できるのは、平成22年(2010年)4月1日の保険法改正以後に締結された保険契約に限られます。

 

また、相続発生後に保険会社へ通知しなければ効力は生じず、仮に保険会社が遺言書の存在を知らないまま変更前の受取人へ生命保険金を支払ってしまったあとでは、変更後の受取人が支払いを受けることはできません。

 

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