21世紀に「海外進出」を成功させた「創業150年の老舗」の進化の秘訣とは? “六代目当主”が語る「変えてはならない本質」の見極め方

21世紀に「海外進出」を成功させた「創業150年の老舗」の進化の秘訣とは? “六代目当主”が語る「変えてはならない本質」の見極め方
(※写真はイメージです/PIXTA)

明治8年創業の「手づくり茶筒」の老舗「開化堂」は、現在までの約150年間、激しい時代の変化に見舞われながらも、長くゆっくりと繁栄を続け、今世紀に入ってから海外進出も果たしています。本記事では、開化堂の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、商う製品が人の心に深く長く残り、愛着を持ってもらえるための「伝え方」について語ります。

「未来への時間軸」も意識する

「過去からの力を借りる」という話を読んで、「うちの会社は自分が始めたから、そんなものは持っていない」と思われた方もいるかもしれません。

 

でも、そういった企業さんにも、「長い時間軸を意識する」という基準は有用です。というのも、この基準は過去だけでなく、未来に向けることでも、力を発揮するからです。

 

たとえば、今の商いの本質はそのままに、何かを少しアレンジして新しいことも加えたいと考えたとき、「自分がそれをずっと続けていけるのか」と自問することは、とても意味があります。

 

なぜなら、「自分がずっと続けていける」と思えることは、自分にとって自然体なことだから。それこそ自分の先祖などから受け継いできた、みなさん特有の「心地よさ」の感覚に沿っていることなのです。

 

逆にいえば、時流に合わせるだけの商いだと、判断基準が外側にしかないので、自分にとって不自然なことになりやすい。自分の中に喜びなども生まれづらく、結局どこかで無理が生じて長続きしないのです。

 

ですから、過去だけではなく未来まで含めて、長い時間軸を意識して判断をしていく。

 

もし、「自分がずっと続けていけるのか」の基準がピンとこない人は、「孫の代にまでこの仕事を残したいかどうか」という基準で考えてみるのでもいいでしょう。

 

実際、京都の宇治で400年間も続いている朝日焼という窯元さんでは、祖父の掘った土を寝かせ、数十年後にその土を使って孫が作陶しているそうです。

 

当代は松林豊斎さんで、京都の伝統工芸の若手後継者6人で結成した、国内外で伝統工芸を広めるプロジェクト「GO ON」の仲間です。彼に「今掘った土と、おじいちゃんが掘った土は、やっぱり違うん?」と聞いたことがあります。

 

すると、松林さんは「成分的なものとかは同じやと思う。でもこれはおじいちゃんが残してくれた土なんだと思ってつくることで、何か今の土とは違うものになる気がする」と話してくれました。

 

そして、そんな当代も、祖父の掘った土で自分の作陶をする傍らで、未来の孫の作陶のために、今土を掘っている、というわけです。

 

僕もそうですが、実際にまだ見ぬ孫が家業を継ぐかどうかはさておき、「孫に誇りに思ってもらえるような仕事にしよう」という視点に立てば、多少の挫折があっても、ずっと頑張り続けようと思えるものです。

 

そうなれば、「売上のために仕方なく……」といった思考にはならずに、心地よいモノをつくり、心地よい職場環境を生み出し、心地よい相手先との関係を築いていこう、できうる限りよいモノを後世に残していこう、という前向きな発想に転じていきます。

 

そういった姿勢が、一般的な売上や規模などの成長とは違う形の、ゆっくりと長く持続する繁栄へとつながっていくのではないかと思います。

 

 

八木 隆裕

開化堂

六代目当主

 

共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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