21世紀に「海外進出」を成功させた「創業150年の老舗」の進化の秘訣とは? “六代目当主”が語る「変えてはならない本質」の見極め方

21世紀に「海外進出」を成功させた「創業150年の老舗」の進化の秘訣とは? “六代目当主”が語る「変えてはならない本質」の見極め方
(※写真はイメージです/PIXTA)

明治8年創業の「手づくり茶筒」の老舗「開化堂」は、現在までの約150年間、激しい時代の変化に見舞われながらも、長くゆっくりと繁栄を続け、今世紀に入ってから海外進出も果たしています。本記事では、開化堂の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、商う製品が人の心に深く長く残り、愛着を持ってもらえるための「伝え方」について語ります。

「長い時間軸」を意識する

では、そうした自分たちの会社や工房にとっての「心地よさ」の感覚は、どうすれば研ぎ澄ますことができるのでしょうか?

 

僕の中での方法は、「長い時間軸を意識する」というものです。

 

そもそも僕は、「心地よい」という感覚は、現在の自分の視点だけによってつくられるものではないと思っています。

 

たとえば、一人の人間であっても、どういう考え方・感じ方をするようになるかは、出会ってきた人、育ててくれた人などの影響を多分に受けていますよね。

 

多かれ少なかれ、そうした人たちから引き継いだ感覚をもとにして、今、みなさん自身にとっての「心地よさ」は判断されています。

 

それと同様に、会社や工房といった立場から考える「心地よさ」というのも、今の時点だけを見ていてはわからないものなのです。

 

開化堂の場合でいえば、初代から五代目までの時間が地層のように重なり、受け継がれてきたことで、「これは開化堂らしいよね」「それは開化堂としては違うな」という感性が磨かれてきました。僕は修業を通してその感覚を体得し、六代目となっています。

 

でも、もしそうした基準なしに、近視眼的に物事を見ていたらどうでしょうか。

 

僕だって、ブームに踊らされたり、「他社もやっているから」などと、よその動きに惑わされたりするかもしれません。

 

その果てにあるものは、目先のちょっとした利益と引き換えに、自分たちの商いにとっての守るべき価値を壊してしまうことだったりするでしょう。

 

ちなみに、この「長い時間軸」を意識する感覚は、海外においても通じるようです。

 

以前、19世紀からシャンパンをつくり続けている「クリュッグ」の六代目のオリヴィエ・クリュッグさんとお話をさせていただく機会がありました。

 

その際、僕は新しい商品をつくるかどうかの迷いを打ち明けたのですが、クリュッグさんの答えは「初代に聞け」でした。

 

なんでも、クリュッグさん自身もかつて「今、このシャンパンをつくっていいのか」と迷った際、過去の資料を調べていて、19世紀にシャンパンづくりを始めた初代のメモにたどりついたそうです。

 

しかも、そのメモに記されていたレシピが、自分が今つくろうとしているシャンパンと同じだったとか。

 

このことで、自分が進もうとしている道が正しいのかどうか、クリアになったそうです。自分一人の視点というものは、ブレやすくもあり、そのときのコンディションなどの影響を受けて判断を誤ることもあります。

 

ですから、今の自分だけの視点ではなく、先祖の目や自分の会社のDNAなど、過去からの長い時間軸の力も借りること。

 

そういったことによって、自分たちにとっての「心地よさ」とは何かを見極めていくことも大切なのです。

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共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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