創業150年の老舗の「手づくり茶筒」が売れ続ける理由とは? 答えは700年前の「兼好法師の格言」にあった

創業150年の老舗の「手づくり茶筒」が売れ続ける理由とは? 答えは700年前の「兼好法師の格言」にあった
(※写真はイメージです/PIXTA)

どんな業種でも「お金」や「時代」は経営に対して大きな影響を与えます。本記事では、京都で明治8年に創業してから現在まで約150年間、激しい時代の変化の中でも変わらず、手づくりの茶筒を製造し販売し続けている「開化堂」の六代目当主である八木隆裕氏が、著書『共感と商い』(祥伝社)から、企業が「お金」や「時代」に振り回されずに、長くゆっくりと繁栄するために大切なことについて解説します。

「顔が見える範囲」で考える

「物柄よきもの」ということにも通じますが、私たちは茶筒であり、そこから派生したモノをつくるとき、「顔が見える範囲」で考えるようにしています。

 

これは、茶筒のクオリティーを維持し、つくり手の思いをモノに込めていくためにも重要なことです。

 

たとえば、工業製品であれば、世の中に大量に商品を出していくことになるので、ターゲットを想定しているとはいっても、顔の見えない大勢に向けてモノづくりをすることになるかと思います。

 

ターゲットの幅も、何千人、何万人、それ以上……ということになるでしょう。

 

しかし、私たちの場合は、生産可能な限られた個数を一所懸命に世に出して、愛していただくよりほかありません。

 

ですから、古くからの取引先の方にしろ、百貨店さんにしろ、海外で販売してくれる家族のような仲間にしろ、「あの人が20個ほしいと言ってくれているから、まずあの人のためにちゃんとつくろう」と考える。

 

そうすることで、同じモノをつくり続ける中で時折生じてしまうような「これって何のためにつくっているんだろう?」といった迷いもなくなります。

 

また、BtoCで購入してくださる個人のお客様ということについても、茶筒をつくる際には、「これを誰にお渡ししたいか」「3人だけに渡すとしたら、その最初の3人はどんな人にする?」といったことを考えながらつくるようにしています。

 

すると、出来上がったモノが本当にそれに見合うものになっているのか、クオリティーをおざなりにしないことにつながりますし、漠然と大勢の人を想定して追ってしまわないことで、開化堂としてのアイデンティティーやつくるモノのラインナップなどにブレが出るのを防ぐこともできます。

 

大衆に一気には届きませんが、私たちの感性に共鳴してくださる方、開化堂を推してくださる方々のことを考えて、ほしいと思っていただけるモノを確実に届けていく。

 

そして、その輪が少しずつ広がっていくことで、気づけばたくさんの方に知っていただけることも出てきているのが、私たちの現状です。

 

最初から不特定多数を目指すようなやり方をしていたら、きっと今のように、どなたかの目に留まったり、人づてに広がったりすることもなかったでしょう。

 

開化堂が苦しかった時代に、古くからの取引先の方が「お前のとこはええもんをつくっときなさい。うちが買うたるさかい」と言ってくださいました。

 

このことが、茶筒をほしいと言ってくださる方が最後の一人になったとしても、ほしいと思っていただけるクオリティーを維持しなくてはいけない、その人のためにいつまでもつくろうという開化堂の思いとして、現在まで連綿と続いています。

 

結果、その一人ひとりの顔を見てつくろうとすることが、開化堂の「推し」になってくださる方たちが増えてきたことにも、つながっているのだと感じています。

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共感と商い

共感と商い

八木 隆裕

祥伝社

手づくり茶筒の老舗「開化堂」 創業明治8年、つくるモノは当時のままの茶筒。 ……にもかかわらず、 ●なぜ、令和の現在でもうまく続いているのか? ●ティーバッグやペットボトルの普及で茶筒がないお宅も多い中、…

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