ロシアが行う情報戦の「4つのターゲット」とは?
戦略文書に書かれた「情報戦」の定義
佐々木 ロシアは情報戦を「情報空間で使われる物理的なインフラ(インターネットなど)やそのなかを行き交う情報そのものをめぐる争い(戦い)」とロシア軍の戦略文書で定義しています。
国家の情報戦略文書では、「その情報戦を戦うには、国家に有利な状態に情報空間を導くことを目的として、世論誘導の実施や、指導者の認知領域にまで入り込み、意思決定を一定方向に仕向けること」などと考えています。
これらの戦略文書を読むかぎり、ロシアは情報戦を、単に技術的な情報セキュリティのみならず、広く、情報空間を使った政治的、経済的、社会的システムを狙った戦いと捉え、それによって国家の意思決定者の心理的操作を含む「認知領域の戦い(認知戦)」とも捉えているということです。
そして、それに基づきロシアが行う情報戦とくに影響工作(Influence Operation)や認知戦による世論誘導・指導者の思考過程誘導などには4つのターゲットがあり、各々の目的は違います。
マイクロソフト社の分析などを参考にしながら、4つのターゲットとその目的および2014年のクリミア併合事案での評価と露宇戦争での現段階での評価を図表にまとめてみました。
ターゲット1.ロシア国内
図表からわかりますとおり、第1のターゲットは、ロシア国内およびクリミア、東部の親ロシア地域であり、戦争(特別軍事作戦)の支持、政権の支持の維持などを目的に行われます。このターゲットに関しては2014年も今回もほぼ意図どおりに目的は達成していると評価できるでしょう。
ターゲット2.ウクライナ国内
第2のターゲットはウクライナ国内です。その目的は、ロシナの軍事攻撃に耐えるウクライナ国民の意思をくじくことを中心に行われます。2014年はロシアがウクライナからの情報発信を封じていたので部分的な成果を得ていましたが、今回はほぼ失敗しています。