(※写真はイメージです/PIXTA)

第二次世界大戦以降、日本国憲法9条「戦争の放棄」に守られて平和を享受してきた日本国民。しかし、近い将来起こりうる懸念事項のひとつに「尖閣有事」があります。では、かりに「尖閣有事」が発生した場合、私たち日本国民にはどのような未来が待ち受けているのでしょうか。東大名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏が解説します。※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

「尖閣有事」が起こったら…憲法9条の改正は必要?

宮澤:予見可能性として将来に起こりうるべき軍事的な衝突を勘案した結果、日本国憲法の改正を先にしなければいけないのではないか、自衛隊法も変えなければいけないのではないか、という問題は、伝統的な議論として日本にもアメリカにも確かに存在します。

 

ただし、議論としてはある、というだけです。現実として、いざとなったら、つまり地政学的に日本が制圧されたら、アメリカはグアムに引っ込むしかありません。グアムの次はハワイです。ハワイの次は西海岸のサンディエゴです。それは好ましくない。

 

アメリカの領海は国際法上、国連海洋法条約というなかで定められてはいます。一方、航行の自由(freedom of navigation)と言いますが、公海において平時には軍艦船舶を自由に航行させる権利はどこの国にも認められています。

 

アメリカは、この権利を太平洋海域で行使するために、最低限、日本までは国防ラインとして持っておきたいと考えています。したがって、尖閣で有事が起こった場合、アメリカはすぐさま日米安全保障条約を発動します。間違いなくやります。

 

自衛隊はどうなるのかといえば、前方展開、つまりアメリカの駐留軍に参加するよう即座に下達(かたつ)されるでしょう。

 

これは憲法うんぬんとは関係がありません。憲法改正がどうのこうのと言ったところで、現実に起こっている問題には間に合いません。国会で衆議院と参議院を通過し、改正の手続きを、それこそ天皇陛下がご認可しなければできないのです。

 

戦後70年間以上、103条ある条文の1条たりとも改正の手続きが行われた試しはありません。改正などできっこないという前提でものごとを考える方が楽です。

 

お断りしておきますが、私は決して国民世論としての憲法改正論を非難したり、否定しているのではありません。護憲派の方々のご意見に対してもそうです。

 

ただ、戦後一度たりとも改正がなされていないという事実を観察すると、現実的に考えるのであれば、その方が楽だということです。

 

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※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

矢作 直樹

ワニブックス

「日本にウクライナ侵攻の悲劇は起こらない!」……アメリカが諸外国の侵略から日本を絶対に守る理由とは? 東京大学名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏が、6つのキーワードから世界…

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