(※写真はイメージです/PIXTA)

第二次世界大戦以降、日本国憲法9条「戦争の放棄」に守られて平和を享受してきた日本国民。しかし、近い将来起こりうる懸念事項のひとつに「尖閣有事」があります。では、かりに「尖閣有事」が発生した場合、私たち日本国民にはどのような未来が待ち受けているのでしょうか。東大名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏が解説します。※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

天皇の譲位でみえた「手続き主義・ニッポン」

矢作:憲法は、条文をどう読むかということであって、実はとてもグレーです。

 

先だって、天皇の譲位ということがありました。皇室典範の第1章第4条には「天皇が崩じたときは、皇嗣(こうし)が、直ちに即位する」とあります。皇嗣というのは、皇位継承順位第1位の皇族を指す呼称です。

 

この条文は、法律的な反対解釈をすれば、空位をつくらなければなんでもよし、ということに読めるのです。現に上皇陛下はそういうふうにお考えになられたから、平成28年8月8日に、「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」を出されました。

 

時の政治家やら関連の人たちは、そう読むことができずに、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」などという的外れな検討会をやりました。

 

そんなもの、実は法律を変える必要もなく、お言葉だけで終わりです。今から天皇陛下から大事なお話があります、国民は謹聴してください、「私は皇太子に譲位をします、以上」。これでいいわけです。

 

どうも手続き論に走る頭のかたい人がいます。もちろん私も含めて人間というものは、われわれの知ることはごく一部で、われわれは無知なものであり愚かなものである、ということを理解して生きていなければいけません。

 

けれども、私は「自分中心天動説」と言っていますが、どうも唯我独尊の人が多いようです。自分が中心にあって、自分はいつも正しいというところから発想をしていることに気づいていないように思います。そこに高いリスクがあります。今の日本のリスクはどこにあるかといえば、私たち国民自身にあるのではないでしょうか。

 

喧嘩をしてはいけないというけれども、今ここで暴漢に襲われそうになったら自分の身を守るのにそんな理屈は通りません。国も法人もわれわれ個人も、生存権は、そんな理屈を超えたところにあります。それを、後付けの法律で議論すること自体が本末転倒だと思います。

 

いみじくも昭和天皇は昭和20年8月14日の御前会議で、「私の責任は先祖から引き継いだこの国を子孫に渡すことである」と述べられました。そこに尽きます。

 

家長は家を守らなければいけない。家族はその下の議論をするんです。最終的には鈴木貫太郎首相が阿南惟幾(これちか)陸相と心を通わせて停戦をまとめましたが、陸軍の一部は一億総玉砕を主張していました。あなた方それで日本の存続に責任が取れるのか、ということなんですね。

 

今の国民の心のあり様は家族ではなく借家人です。それで国民に主権があるなどというのは無理があります。我が国を我が家我が身と思って本気で生きている人がどれだけいるのか、という話です。

 

昨今の新型コロナ騒動ひとつとってもそうです。WHO(世界保健機関)の指令のもと、我が国も厚労省はじめ役所、政府、メディアが盲従し、国民を巻き込んでバランスを欠いた大騒ぎを続けて国の活力・経済を傾けてきました。

 

本来なら、厚労省や政府はWHOの指令なるものを是々非々で検討し、国民は政府や役所の言うことを鵜呑みにせずに自分で的確に情報をとり俯瞰的に見て総合的に判断し、未来を担う子供たちを大切にして適切な行動をとるべきです。

 

 

矢作 直樹

東京大学名誉教授

宮澤 信一

国際実務家

 

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※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

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矢作 直樹

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