(※写真はイメージです/PIXTA)

第二次世界大戦以降、日本国憲法9条「戦争の放棄」に守られて平和を享受してきた日本国民。しかし、近い将来起こりうる懸念事項のひとつに「尖閣有事」があります。では、かりに「尖閣有事」が発生した場合、私たち日本国民にはどのような未来が待ち受けているのでしょうか。東大名誉教授の矢作直樹氏と、世界の金融や国際協議の実務にかかわる宮澤信一氏が解説します。※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

「憲法改正」に固執するのは“的外れ”といえるワケ

憲法を改正しなければなにもできないという思考に固着、拘泥(こうでい)する必要はありません。

 

憲法第9条は2項に分かれていて、第2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」としてあります。

 

けれども連合国憲章、いわゆる国連憲章は第51条で「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」として、集団的自衛権を認めています。

 

連合国憲章は日本国憲法の上にある、いわば上位法です。かなり威力を持っている典章ですから、そこに書かれている集団的自衛権というものにぶら下がったかたちで動けばいいだけの話です。

 

連合国憲章第条に書かれている集団的自衛権を行使しなければいけない状況に陥ったので、憲法第9条は無視して同盟国たるアメリカと共同作戦をやります、というふうにすればいいのではないですか。

 

ただし、歴代天皇も戦後は「日本国憲法を守り」または「のっとり」と様々な場面でお述べのとおり、現実の法典として存在している以上は、遵守しなければならないということもあり、9条の持つ最高法規性を尊重する態度は大切であると思います。

 

その上での話なのですが、望ましいこととは申せませんが、近年の日本と周辺諸国との関係を直視する際、日本が軍事的に自衛権を行使せざるを得ない事象が発生した場合、一般論として、向こうから攻められなければいけないという条件あります。しかし、近年はそれも解釈が変わり、グレーゾーン事態という考え方が入ってきています。

 

徐々に変わってきた「報復」の定義

作戦構想の基本は、以前は例えば真珠湾方式でした。明らかに自国の領土、領海、領空を侵害され、なおかつ武力によって打撃を受けた、被害を被ったという事態においてようやく報復ということが許容される、というのが第二次大戦後の国際法のあり方でした。

 

最近は、侵攻の兆候があって、相手が打つか打たないかという瞬間にどうするかという議論になってきています。

 

防衛省も頭を悩ませているところだと思うのですが、それが軍艦でもいいのですが、例えばどう考えても相手方が武器を持っているだろうという時にどうするかという問題です。

 

そこで中華人民共和国は、軍艦とわからないようにして海軍の兵隊を乗せた偽装民間船を何十隻と尖閣によこしているわけです。これに対しても、威嚇行為があったと見なして集団的自衛権を発動させようと思えばできるのです。

 

問題は、集団的自衛権を発動させようと思えばできるという建付のなかで、第9条をどのようにそこに落とし込むか、というテクニカルな部分です。

 

私たち実務家はそう考えるのだけれども、いわゆる保守の人たちは、それをものすごく高級な議論に持っていきますね。憲法改正をしなければいけないとか、そのためには安倍内閣じゃないと駄目だなどと言い始めます。

 

当時は菅直人氏のアシストが悪過ぎたので安倍晋三氏に期待する保守層が多かったように思いますが、この点私は菅直人氏も安倍晋三氏も支持していませんでした。

 

憲法改正を諦めるという観点で言っているわけではなく、現実としてそれはできないのだから、できっこないことを前提において話すのはいい加減にやめましょうということです。

 

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※本連載は、矢作直樹氏と宮澤信一氏の共著『世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか』(ワニブックス)より一部を抜粋・再編集したものです。

世界を統べる者 「日米同盟」とはどれほど固い絆なのか?

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矢作 直樹

ワニブックス

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