“オイシイ職”だった教育現場も「競争激化」
教育現場でも競争が激しさを増している。重慶市の公立中学校で教師を勤める知人は「1日48時間あっても全然足りない」とこぼす。
中国の教員は、夏休みや冬休みなどの長期休暇が与えられるのはもちろん、生徒の両親からの「心付け」("袖の下"のようなもので、副収入につながる)もよくあり、ある意味"オイシイ職"とされてきた。
ところが状況は一変。いまでは通常業務をこなしながら夏季・冬季休暇の課題作成に勤しみ、休日も無償で学習サポートを名乗り出る。
進学率を上げるための涙ぐましい献身ぶりだが、学校側が高く評価するのは、中身は別にして"モーレツ教師"という姿勢そのものらしい。受験大国の中国ではこのような動きが大歓迎される。教師側から見れば、献身的な態度を示すことが給料アップに直結するとは限らないが、少なくともリストラされる可能性は低くなるという。
なんとも後ろ向きな考え方だが、知人は「意地でもいまの職を手放したくない。エンジン全開で勝ち抜く」という。その気迫に思わず圧倒されてしまう。
ゼロコロナ政策のダメージが残る中国経済。23年度の大学新卒者は過去最多の1,158万人に達する見通しだが、就職難も大きな社会問題として取り沙汰されている。
安定を求める若者は公務員を目指す傾向にあり、今年1月の国家公務員試験では一部職種の倍率が6,000倍にも達した。国有企業の人気もじわり上昇中で、ライバルが増えると戦々恐々の中堅・ベテラン社員も少なくないそうだ。不毛な競争に疲れ、リストラに怯える社員。すべてがそうではないだろうが、国有企業の意外な側面も垣間見られる。
冒頭の建築大手で働く彼は"勝者"になるべく、今後1年間の週末フル出勤を決意した。クレイジーな考えだが、勝ち抜く、いや生き抜くためにはこのような気合いと根性も不可欠なのだろう。結局は「質より量」というのが現状だ。
ただ、これからは効率やクオリティーを重視する社会になることを期待したい。彼らの精神力を有効に使えば、国有企業もとてつもない成長を遂げる……だろうから。
山藤 秋男
東洋証券株式会社上海駐在員事務所
中国株アナリスト/ストラテジスト
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走