中国企業を悩ませる「人件費」
中国企業が雇用や人件費の面で厳しい選択に直面しつつある。テック系の一部では規模拡大一辺倒から収益重視姿勢へのシフトがうかがえ、外食大手は人件費の圧縮が喫緊の課題だ。景気回復期待の一方で、雇用の改善にはまだまだ不透明感が漂う。
米国のIT大手がリストラに踏み切っているのと歩を同じくして、中国のテック系企業も人員削減を進めている。
アリババ集団(09988)の22年末時点の従業員数は前年末比7.5%減の23万9,740人、テンセント(00700)は同3.8%減の10万8,436人。後者は直近最多の11万6,213人(22年3月末時点)と比べると、ここ9ヵ月間で6.7%減らしたことになる。販売・マーケティング費などの減少も合わせ、コスト削減の動きが感じられる。
一方、ネット旅行手配の同程旅行控股(00780)の従業員数は、5,431人(19年)⇒4,813人(20年)⇒5,339人(21年)⇒6,134人(22年)で推移。新型コロナ禍に伴い一時減少となったが、その後は旅行業界の復調を見越して増加に転じている。
外食産業も人件費が悩みの種だ。大手各社の「人件費/売上高比率」は上昇傾向。“コロナ前”の19年と22年を比べると、呷哺呷哺餐飲管理(シャブシャブ、00520)は25.6%⇒32.9%、九毛九国際控股(09922)は25.9%⇒28.3%、味千(中国)控股(00538)は26.5%⇒29.8%にいずれも上昇している。都市封鎖などに伴う店舗閉鎖で売り上げが減少し、コストだけが膨らんだという構図だ。
一方、元々福利厚生が手厚かった海底撈国際控股(ハイディーラオ、06862)は、21年に35.7%まで上昇していたが、22年は33.0%に低下。このコスト削減効果もあり、前述の3社が22年12月期で赤字もしくは大幅減益だったのに対し、ハイディーラオは黒字転換を果たした。
最大1,491店舗(21年6月末時点)あった中国の火鍋レストラン数を22年末までに1,349店舗に減らしてスリム化を図ってきたほか、アルバイトの積極活用などによるコスト圧縮を進めてきた成果が出たようだ。