アリババとアマゾンの相違点
①新興国市場モデル:社会の困りごとにフォーカスを当て社会インフラを補完
アリババは、中国経済の成長段階における「社会の困りごと」(ペインポイント)を事業機会として、インターネットなど進化する技術を活用して解決することで成長してきた面が強い。このペインポイントの解決を担ったのが、アント・フィナンシャル(現アントグループ)による金融機能(第2層)と「菜鳥網絡」による物流機能(第3層)である。
特に、金融機能は、電子商取引における売り手と買い手の不安をアリペイの提供により解消し、さらに、アリペイを通じて集まるデータを活用して信用体系をつくった。「低い社会信用」という中国経済社会のペインポイントに焦点を当てて、これを改善することでプラットフォームに消費者とパートナー企業を定着させたのである。
さらに、実体経済の金融ニーズに伝統的な金融機関が対応できない隙間を埋めることで金融インフラを補完し、経済取引を活性化させた。これに対してアマゾンは、米国ですでに発展している金融システムを活用している。
⽇本銀⾏フィンテックセンターの資料「FinTech─現状とこれから」(2018年)は、⽶国ではフィンテックの潮流の中でも銀⾏を中⼼とした⾦融システムは基本的に変わっていないが、中国ではアリババ、テンセントの2⼤プラットフォーマーにより、データを基軸とする金融インフラ構築・社会変⾰が進められていることを指摘している。
社会の困りごとを解決しながら、次第に豊かになる消費者に利便性を提供することで「集客」して、プラットフォームの規模を拡大してきたアリババのモデルは、東南アジアなど新興国に応用しやすい。中国プラットフォーマーの自国市場での実践経験は新興国市場の開拓で武器となるだろう。
一方で、中国ではプラットフォーマーが提供する金融サービスの影響力が高まり、政府の金融政策が及ばない経済圏が形成されていることが、プラットフォーマー規制の要因の一つとなっている。
②プラットフォーム志向:社外のリソースを集めて活用
物流機能に代表されるように、アリババはプラットフォーマーとして社外に広がるリソースを活用して、ネットワークを運用しようとする志向が強い。
アリババの基本思想は、「物流など専門性が高く投資が必要な業務はそのプロフェッショナルに任せて自らはデータや事業機会づくりによりプロフェッショナルを支援する。プロフェッショナルを集めてネットワークを形成する」というもので、プラットフォーム志向が強い。
変化の激しい中国市場で自らはできる限り資産を持たずに、社外にネットワークを広げたほうがリスクを抑えてスピードと柔軟性を確保できると考えている。アマゾンは、自ら物流倉庫を構築して運営することで物流品質を差別化の武器としている。
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