(※画像はイメージです/PIXTA)

「中国版アマゾン」ともいわれてきたアリババ。しかし、もはやアリババのビジネス戦略の独自性は、その俗称の域を超えていると、NTTデータ経営研究所グローバルビジネス推進センターのシニアスペシャリスト岡野寿彦氏はいいます。本記事では、アリババとアマゾンを比較分析し、アリババを成功に導いたビジネス戦略を紐解いていきます。

③伝統的産業の再構築にもコミット

アリババは、ニューリテール(新小売)、ニューマニュファクチャリング(新製造)、ニューファイナンス(新金融)など「五新戦略」によって、既存企業の変革を支援することを通じて伝統的産業に進出している。

 

不効率なまま残っている伝統産業とインターネットとの「融合」、再構築を成長戦略として位置付けているのだ。デジタルによるマッチングにとどまらず、リアルなサービスの提供まで関与する志向が強いことが、米国と比較した中国プラットフォーマーの特徴だといえる。

 

④政府政策への貢献

 

アマゾンと米国政府は、競争政策・法令を挟んで対峙しているという面が強い。GAFAなど米国プラットフォーマーは、国家の安全保障や感染症の拡大など非常時においては国家に貢献する姿勢を示すが、基本的には株主へのリターンを重視した経営を行い、政府とは一定の距離を保っている。

 

アリババをはじめとする中国プラットフォーマーは、経営戦略において政府政策への貢献を重視している。伝統的産業の効率化に取り組むのも、中国政府の課題意識を理解してこれに貢献しようとする姿勢の表れだといえる。プラットフォーマーへの規制が強化される中で、国家戦略への貢献をより強く志向するだろう。

 

例えば、中国政府が「科学技術イノベーションの強化、技術の自立」を重点方針として掲げる中で、AI、ブロックチェーンや量子計算などの重要技術を開発してクラウド上で提供することで、中国企業の製品開発を支援している。加えて、ハイテクなど企業に実験・応用の場を提供してイノベーション創出を牽引する役割を担う。

 

さらに、海外事業展開を通じて中国経済圏の拡大にも貢献しようとしている。そして、中国企業が得意なオープン・モジュラー型アーキテクチャによる水平分業への産業構造転換をリードする役割も果たそうとしていくだろう。

 

※本記事は、岡野寿彦氏の著書『中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ』(日経BP 日本経済新聞出版)から一部を抜粋し、幻冬舎ゴールドオンライン編集部が本文を一部改変しております。

 

 

岡野 寿彦

NTTデータ経営研究所グローバルビジネス推進センター

シニアスペシャリスト

 

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※1 盒馬鮮生(Hema Fresh)のビジネスモデルについて岡野(2020)第9章第1節「アリババ『ニューリテール戦略』:データ駆動による業界の再構築」(287ページ)参照。
※2 1997年にナスダック市場に上場

中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ

中国的経営イン・デジタル 中国企業の強さと弱さ

岡野 寿彦

日経BP 日本経済新聞出版

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