(※写真はイメージです/PIXTA)

児井正臣氏の著書『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』より一部を抜粋・再編集し、人口が減少する日本で「新築住宅が減らない理由」についてみていきます。

社会問題にも…「土地所有者」と「住宅会社」の事情

●土地を有効活用したい土地所有者の事情

 

農地や山林の所有者は、後継ぎがいないなど農業や林業の継続が何らかの事情でできなくなると、土地の有効活用を図りたいと考えるようになる。住宅会社は、定常的な家賃収入が得られるので賃貸住宅にしたらどうかとか、アパートを建てて事業赤字にして節税対策をしたらどうかといった提案をする。

 

土地所有者は、とにかく好条件で土地活用ができれば良いのでそういう話には飛びつきやすい。

 

特に大都市近郊では、それによる儲けも大きいので、住宅に変えたいという意欲が出てくる。市街化調整区域内にある土地は住宅地に変えることはできないのだが、自治体の人口減を食い止めたいという希望と相まって、例外策定へのバイアスが働き、農地だったところに虫食い的に新築住宅が建つ。

 

このケースは、特に潜在的に地価が高い首都圏近郊に多いが、最近では地方都市の郊外でも増えている。

 

●新規に住宅を建て続けなければ事業が継続しない住宅会社の事情

 

住宅会社の中には住宅の保守管理、リフォームなどのストックビジネスを主力に、低成長下でも堅実な企業活動を続けているところがある一方、高度成長期のように常に新築住宅を作り続けなければやっていけないようなビジネスモデル、すなわちフロービジネスを続けざるを得ない企業もある。

 

総人口が減り住宅需要が減少する中で、それでも住宅を作り売り続けなければならない。だから土地所有者の、有効活用や処分をしたいという希望と、自治体の人口を減らしたくないという事情に乗って、住宅を建て続ける。

 

その中でも土地も資金も持たない個人に対し融資をし、オーナー商法をはじめたところもある。建てたアパートを一括で借り上げ、入居者に転貸する「サブリース」と呼ばれる形態に、旧来からの土地所有者だけでなく、資産を持たない個人にまで勧誘があり、それに乗せられた人も多い。

 

もちろん需要のないところに建てた住宅に人が住むことはないので、新築空き家というのがあちこちに現れる。新たな空き家発生だけでなく、投資が回収できないとか、ローンの返済ができないといったオーナー商法の犠牲者の出現といった別の社会問題も起きている。

次ページ事件となったケースも…金融機関の事情

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『自然災害と大移住――前代未聞の防災プラン』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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